『泳ぎすぎた夜』 五十嵐&マニヴェル両監督インタビュー

『Takara, la nuit où j’ai nagé(泳ぎすぎた夜)』
五十嵐耕平 & ダミアン・マニヴェル監督、インタビュー。

 青森県弘前市。主人公は7歳の少年TAKARA(本名も古川鳳羅(たから)くん)。魚市場に勤めるお父さんに絵を届けようと、雪が通学路を消し去った、道なき道を行く。五十嵐耕平(『息を殺して』)とダミアン・マニヴェル(『若き詩人』『パーク』)の日仏の若き才能が手を組み誕生した小さな冒険の物語だ。

 2017年のベネチア映画祭で、先鋭的な作品が集まるオリゾンティ部門に出品。同映画祭の名物ディレクター、アルベルト・バルバラにして、「この小さな映画に恋をした」と言わしめた。日本びいきのマニヴェル監督は、90%以上は流暢な日本語で答えてくれた。

 

「雪を撮りたい」というマニヴェルさんと、「子どもを撮りたい」という五十嵐さんの気持ちが合体した作品と伺ってます。マニヴェルさんは、なぜ「雪」に惹かれたのですか。

マニヴェル:僕の先に撮った全部の映画は、夏に撮影しました。いつも夏の光があった。だから今回は、冬の絵が撮りたかった。雰囲気が違う感じになるので。

なぜ青森を選んだのでしょう。

五十嵐:僕が日本に住んでいて知っていたのと、撮影で青森に行ったことがあるって、とても好きになり、ダミアンに提案したのです。ロケ地自体は弘前。青森では、なみおか映画祭(92年から05年まで浪岡町に存在した野心的なプログラムで名高い伝説の映画祭)の元ディレクターの三上雅通さんがharappa(アートのNPO法人。映画の上映活動も行う)をやっていてお世話になり、そのつながりもありました。何もなしで撮影に行くのはきついと思うんですよ。青森なら知り合いもいたので、できるのではと。僕の出身は静岡だから、雪は新鮮でした。

五十嵐さんは「子どもを撮りたい」ということでした。

五十嵐:被写体として興味がありました。子供は大人と体の動かし方も、考えていることも違う。僕たちも当然、経験してから大人になっているけど、忘れてしまった何かがあるはず。それに興味があり、撮りたいと思いました。

少年たから君を力演、古川鳳羅(たから)くん。

日仏で文化の違いがありますが、撮影中に意見の対立などはなかったのですか。

五十嵐:それは全くない。

マニヴェル:問題があったら「アイデアはなに?」と、他のアイデアを探すし、話し合う。僕たちは撮影のエネルギーが全く違う。リアクション、テンポ、エネルギーが全然違うし、アイデアも違う。だから大丈夫だった。

仕事の役割分担はありましたか。

マニヴェル:ルールはなかった。

五十嵐:実質的な問題として、鳳羅くんを演出する時は、僕が日本語で話すことが多かったけど、ダミアンもしたし、特にパートを分けてません。混ざってます、完全に。

マニヴェル:撮影は難しかった。子どもはすごい若いから、鳳羅くんのエネルギーが強い!だから(僕たちの)喧嘩の時間がなかった。

五十嵐:そんなことをしてる時間がない。めちゃくちゃやんちゃな子で(笑)。いろんな問題あったから。

言える範囲でどんな問題がありましたか。

五十嵐:すごく感情豊かな子で、悲しい時は悲しいし、遊びたい時は遊びたい。それは大人の事情と関係のないことです。彼にとって一番大事なのは、今の感情に従うこと。それに仕事の進み具合とフィットさせるのが大変でした。

本作は無声映画のように言葉に頼っていません。それも挑戦に思えました。絵や写真も重要アイテムです。

マニヴェル:子供の孤独や詩的な動作に興味を持ちました。アクションムービーだと思ってる。子供の細かい動きがいっぱいで、それは本当にきれい。この小さい動作を見れば、子供の考えがわかる。この映画はリアリスティックだけど、全然リアリスティックではない。ポエティックです。

おふたりのコラボレーションは今後も続くのですか。

五十嵐:デフォルトではないし、コンビではない(笑)。まだ話してません。お互いに時期がきたら、またやるかもしれません。

マニヴェル:それがナチュラルなら。いいコラボレーションだと思ってる。

最後に作品のアピールをお願いします。

マニヴェル:絶対見てください。なぜなら驚くと思います。子供時代へ再びコネクトできます。それについて本当に仕事をしました。子供時代を思い起こし、それに感動すると思います。その冒険に出てみてください。

五十嵐:自分たちが子供だった頃のある感覚、自由さだったり孤独だったり、何かを恐れずに挑戦することが大事です。孤独な気持ちを味わっても、ちょっと冒険に出てみる、それは誰かの愛情があって成り立つ。

 そういう世界がポジティブに捉えられたらいいなと思ってます。ドキュメンタリーっぽいけどフィクション。僕たちがこうでありたいと願う理想の姿、映画なんじゃないかな。

(聞き手=林瑞絵、2017年9月ベネチア映画祭会場にて)

上映情報 http://www.allocine.fr/seance/film-258197/pres-de-121529/