欧州を襲ったアフタ熱。

 2月19日に英国南部エセックス地方の養豚場にアフタ熱(口蹄疫*)が発生、数日後にはスコットランドからウェールズ、北アイルランドでも猛威をふるい、4月12日までに1241の農場が隔離され約140万頭の家畜が処分された。発生から約  1カ月後にはフランスのマイエンヌ県とセーヌ・エ・マルヌ県にも飛び火し、オランダ東部でも3カ所で口蹄疫が発生。
 フランスでは、口蹄疫に罹った家畜のほか、回教徒の祝祭行事(A錨)に備え英国から輸入された約2万頭の羊と、感染の疑いのある家畜が1頭でもいた場合は農場所有の全家畜を48時間以内に処分、4月上旬までに40県で約5万3千頭を畜殺。なかには畜殺後の検査で陰性だったのに833頭の羊を1日のうちに失った家畜業者もいる。処分宣言された家畜は感電死やピストル屠殺、または安楽死させられた後、空き地で焼かれるか石灰とともに地下に埋められた。黒煙柱の前で呆然と佇む家畜業者たちの姿は、過酷な国際市場の法則に伏す生産者の無力さそのもの。
 今回被害に遭った家畜業者には、羊1頭当り500F、豚800F、牛は最低額5000Fの援助金 (60%はEUの補助金) が政府から出るが精神的打撃は大きい。そして数週間にわたる輸送禁止による精肉の輸出減少額は約100億F、乳製品の損失額は約270億Fにおよぶとみられる。英国ではアフタ熱による損害は観光業界にもおよび、足止めをくい復活祭時期の収入がゼロのホテルやレストランが続出している。
 1546年に伊獣医フラカストロが発見した口蹄疫は数十年ごとに欧州を襲い、1967年に英国で50万頭が発病。50年代に予防接種が開発されたが英国だけが拒否した。理由は、今のところ予防接種を受けた家畜と口蹄疫症の家畜との見分けがつかず、また予防接種した家畜は保菌動物なのでどこにも輸出できなくなること。例えば、EU全体で3億頭にのぼる家畜を6カ月か1年毎に予防接種した場合、毎年数億Fの出費となるばかりか、予防接種後3年間は輸出できなくなる。
 こうした経済的理由から、1991年に欧州連合は牛以外の予防接種を廃止し、感染した家畜は即時処分する方針に変えた。以来、EU産家畜・乳製品はロシア、中国、日本と三大市場にも進出、ロシアだけで総輸出量の30~40%に達している。
 口蹄疫は93年にブルガリア、ロシアを通過、96年にはバルカン諸国、トルコ、ギリシアを襲っている。島国、英国に飛来した(?)ウイルスは、空港で回収された機内食の残飯からとも、ある中華レストランから養豚業者が回収した残飯の中にいたともみられている。口蹄疫は空気感染するだけでなく、グローバリゼーションの時代、飛行機で運ばれ車のタイヤや靴底にもついて移動できるのである。(君) 

*口蹄疫は牛・羊・豚・山羊・キリン等、蹄が割れた偶蹄類に空気感染もするウイルス性悪質伝染病。


99年度フランスの羊肉輸入量 (184 484t)

88 341t (48%) 英国
45 271t (25%) アイルランド
27 591t (15%) ニュージーランド

EUの豚肉輸出国

581 260t (38%) デンマーク
243 380t (16%) フランス
189 440t (12%) ドイツ
180 350t (11%) オランダ
* t (トン)
*Le Monde (01/3/9)