Chez Robert-Electon libre
シャトレとルーヴル美術館の中間地点、リヴォリ通りに面した空き家へやって来たのは1999年11月。中心メンバーのカレックス、ガスパー、ブルーノ(自称KGB) の3人は、以前は証券取引所前のスクワットLa Bourseにいた。
10年以上放っておかれた建物内は、来たばかりの頃はごみ溜め&鳩の巣城と化していたそうだ。現在は10~15人のアーティストの制作の場で、一部は建物内で暮らしている。水道、電気の請求書は今まで一度も受け取ったことはない。「チベリ市長が肩代りしてくれているのかな」とブルーノ。
ほかのスクワットとの違いは、毎日13時30分から19時30分まで誰でも自由に出入りできること。毎週土曜日の15時30分からは、ジャズやジプシー音楽のコンサートもある。パリのど真ん中ということもあり、年間の入場者数は40,000人にのぼり、現代美術の集合展示スペースとしてはフランス国内で4位をマークした(ジュ・ド・ポーム美術館は100,000人、全国平均7,000人)。「自分たちが所有しているわけではないので、公開するのは当然なこと」とのことだが、作品展示の場としてはラッキーなロケーションではある。ギャラリストが寄ることもあり、それがきっかけでブルーノは、バスティーユのギャラリーでのエキスポが決まりそうだとか。
建物の所有者CDRから猶予期間は3月15日までと定められた。「その後はどこへ行くんですか?」と聞くと、「この同じ場所で春到来のパーティーをするので、遊びに来てくださいね」という答えが返ってきた。
*59 rue de Rivoli 1er
建物はリヴォリ通りに面している。
パリでは1960年代から不動産が高騰し、アーティストたちはアトリエの家賃が払えなくなって地方へ流れて行った。パリからアーティストが消えてしまうのを懸念した文化省は、60年代末、低家賃住宅HLMの一部をアーティスト用のアトリエ兼住居に当てて低家賃で貸すシステムをつくった。その後、1982年に文化省造形芸術委員会が発足。そこではアトリエ提供のほか、助成金や作品発表の場を提供したりと、様々な形でアーティストの活動を援助している。昨年には文化省、パリ市、イル・ド・フランス圏各市が共同でイル・ド・フランス地方文化事業局をつくり、芸術活動の推進をイル・ド・フランス全域に広げている。
Val d’Oise にあるLa Caserne、St.Ouen のMan d’Oeuvreなどのアート・アソシエーションも援助してきた。
低家賃アトリエの振り分けはこの文化事業局が担当しているが、パリと近郊に1000カ所あるアトリエは全部賃貸済み。現在まだ600人の待機者がいる。申込数が増える一方でアトリエを増やすのは至難の業のようだ。また、待機リストに登録するには一定額以上の収入が要求され、超貧乏には登録の資格がない。コネがなければすぐには入居できないという噂もあり、「金もコネもない」場合、どうすればいいのだろう…?