COUPER BRAS ET JAMBES
わあ、残酷! このイラストにどぎもを抜かれて動けなくなりましたか。そういう状態にすることを “Couper bras et jambes” 、気をつけてくださいね。あなたも腕と足がなくなってしまうかもしれません。こういった残酷さは言語表現にはつきものです。”Couper” という動詞に限っても10近くの言い回しがあります。たとえば 《Ça te la coupe!》(お前のアレを切ってやる)。このアレが何を指すのかさだかではありませんが、「ビックリ仰天で、言葉もないだろう」という意味です。見通しゼロの真っ暗闇や濃霧は “à couper au couteau” (ナイフで切れそうだ)といいます。こんな残酷表現のきわめつきは “se faire couper en quatre” あるいは “se faire couper en rondelles, en tranches ” でしょう。自分を四つに切ったり輪切りにするのは、「誰かのために身を粉にして尽くす」という意味です。
AVOIR DES POCHES SOUS LES YEUX
パーティー続きで夜ふかしが重なり睡眠不足。それでもがんばってパソコンに向かって仕事をしていたら、画面の見すぎか目がちくちくと痛くなり、焦点がボケてきて心配になりました。バスルームに走り込み、鏡の中の自分を見つめてびっくり! “poches sous les yeux”(目の下にポケット=くま)ができているではありませんか。いつの間にかそのポケットにも慣れてしまいました(それに目の下にポケットがあるのは何かと便利)。”Avoir des valises sous les yeux” (目の下にカバンがある) よりはまだましですしね。
《Tu viens avec moi au café? J’te paye un jus.》「カフェに行かない? “jus” をおごるよ」と声をかけられてもこの “jus” は、ジュースのことではなくコーヒーのことです。一口飲んで友人が 《Il est degoutant le cafe, ici! C’est du jus de chaussette!!》「まずいなあ、ここのコーヒー! 靴下のジュースだ!!」と叫んだとしても、スキャンダル騒ぎを起こしてはいけません。靴下のジュースといっても、薄くてまずいコーヒーのことでしかないのです。
AVOIR D’AUTRES CHATS A FOUETTER
ネコはイヌと並んで人間にとってごく身近な動物ですから、ネコが登場する言い回しも数多くあります。”Avoir un chat dans la gorge” (喉の中にネコがいる=喉がつかえる、声がしゃがれる)、”appeler un chat un chat”
(ネコをネコと呼ぶ=率直にものを言う、歯に衣を着せぬ)、 “etre comme chien et chat” (ネコとイヌのようだ=犬猿の仲だ)、”il n’y a pas un chat ” (ネコ一匹いない=人っ子一人いない)、”donner sa langue au chat” (ネコに舌をやる=わからないから降参)、 “quand le chat n’est pas la, les souris dansent” (ネコがいないと、ネズミが踊る=鬼のいぬ間の洗濯)) などなど。少々スカトロジー的な表現では “chat qui chie dans la braise” (燃えかすの上でクソをするネコ=きわめて窮屈な姿勢で多少なりとも滑稽な人)というのもあります。イラストにしたら面白い表現がまだまだありますが、”j’ai d’autres chats à fouetter!” (鞭打たなければならないネコが他にもいる=もっと大切なことがほかにもある) ので、このくらいでさようなら。