TETE AU CARRE
《En forme?》 というくだけた表現で「元気?」と尋ねられると、”forme” はもともと形を意味するから、《En forme de quoi? 》「どんな形?」と答えたくなります。運悪くチンピラたちに殴られた少年が、すっかり暗い気持ちで家に帰ろうとしているときに、友人にばったり出会ったとします。以下の会話は、文字通りに意味をとりさえしなければ、なかなか真実味にあふれているものなのです。
友人: 《Oh dis donc! T’es pas en forme, toi!》 「どうしたんだい! 形になっていないねえ (元気がないね)!」
不幸な少年: 《Ben… on m’a fait la tête au carré.》「ああ、頭を四角にされてしまったんだ(顔がゆがむほど殴られてしまったんだ)」フランス語はときどきみごとに暗号化された言語のような印象を与える、と思いませんか。
《Si tu ne fais pas bien le ménage dans ta chambre, tu auras des moutons sous ton lit!》
「きちんと部屋を片づけないと、ベッドの下に羊がやってきますよ」と、きわめて当たり前のことのように母親は子供たちをおどかします。でもその羊は、埃の玉のことでしかないと教えてあげてほしいものです。そうでない子供たちは、ベッドの下でメー、メーと大騒ぎする羊たちを夢見て眠れなくなりそうです。
肉を食べると、肉食動物。草、野菜、果物を食べると、草食動物。では “dévorer un livre” (本をむさぼる) 人? それは大の読書家と呼びます。そういえばむさぼりたくなるような「食べ物」本がたくさん出版されていますね。
AVOIR LES YEUX PLUS GRANDS QUE LE VENTRE
“avoir les yeux plus grands que le ventre” (おなかより目が大きい) は、17世紀には”avoir les
yeux plus grands que la panse” (太鼓腹より目が大きい)ともいいました。目が大きいとすべて大きく見えてしまいます。自信過剰で自分の能力を買いかぶっている人を「おなかより目が大きい」というのです。たとえ
ば、走り高跳びのチャンピオンがバーを高く上げすぎて情けないことにクリアーできなかったり、スーパーの客がキャディーをいっぱいにしたのはいいけれどレジでお金が足りなかったり、身分不相応な超美人を恥じることなく口説くことに熱を上げたりすることです。美食というのはやっかいな欠点らしいですね。