インタビュー:動物雑誌のリーダー“30 millions d’amis”
フランスで動物雑誌といえば“30 millions d’amis/3千万の友”。発行部数10万、53000人の定期購読者を抱える動物月刊誌のリーダー格だ。今は亡きジャン=ピエール・ユタン氏が1976年に始めたペット番組“30 millions d’amis”(毎週日曜晩、TF1)とほぼ同時に創刊された。同名の動物保護の団体もある。
ブローニュにある、次号の追い込みにかかる雑誌編集室。夜19:30の現在も編集長氏とアート・ディレクター氏がデスクを見下ろして話し合っている。
“動物愛護”という言葉は、何かと人間(自分など)が糾弾されそうでコワいのだが……「人間による動物の無惨な扱いや、存在を脅かすような行動は糾弾します。しょせん動物は動物、人間と同じとは言わないまでも、社会のなかに彼等の場所と権利があるのは当然。犬だって、ここまで飼い慣らしたのは人間なんですから。でも、それだけではありません。人間と動物のポジティブな関係を前面に扱う方針です。」と副編集長のクローディーヌさん。「人間について語ることも大切です。私がジャーナリスムの道を選んだのも人間に興味があったから。動物への接し方で、ひとりの人が見えてくる。ハンティングの好きな人とそうでない人では当然動物への思いが違うように、動物を通して人間もいろいろだな、と学ぶことが多いですね。」
たしかに誌面には、動物愛一辺倒で人間を敵にまわすような陰険さはない。カエルの写真を撮るために水中に体を浸して辛抱強くシャッターチャンスを待機するカメラマン、傷を負ったり疲れたりした騎馬をブルターニュの浜で《タラソテラピー》させる青年のインタビューなど、人間よりの記事も多い。そして「本ではなく雑誌ですからニュース性も必要。動物好きの雑誌だからといって少女趣味に陥らずに、知的で幅広い話題を提供することも大切です。」編集部6人の周りに、獣医、カメラマン、その他の動物スペシャリストが協力者として約50人。情報網は広く豊かだ。クロディーヌさんは7月にギアナへ亀の取材に行って来た。最近気になっている動物の話題は、オオカミや熊のような捕食性動物を自然に帰すか否か、ハンティングの規制、実験用に子犬を飼育するプロジェクトへの反対運動などだそう。編集部は「ペットとの死別をどう生きるか」という特集を準備中、楽しみだ。家では愛猫がクロディーヌさんの帰宅を待っている。(美)