ジョスパン内閣にとって命取りになりかねなかった台風の眼三つ。 3年来アレーグル教育相の教員を見下す数々の暴言に怒り心頭に発した教員達は、中・高校での補習指導の導入や職業校の産学一体化等の荒療治の改革案にも反発、教員の増員を凍結された地方の父兄や生徒らと5週間以上デモを繰り返し、アレーグル教育相を袋叩きにした。 昨年11月に辞任したストロスカーン前経済相の構想を基に、後任のソテール経済相が、国税局と財務局の合理化統合案を1月に発表して以来、全国6割以上の税務署を職員が封鎖、ストに突入。そのうえ経済相が今年の税収入余剰金は500億フランと公表したものだから両局の労働組合は、金が余っているのに人員削減とはもってのほか、と同改革案の撤回を迫る。見かねたジョスパン首相は経済相に改革案を引っ込めさせる。経済相は首相の速断に唖然、辞めさせられる前に辞表を提出。 もうひとつは、ズッカレリ公務担当相が泥沼に足を突っ込んだ公務員の35時間時短問題。それに加えて3月21日、首相が老齢年金の財源補充のため、現行の公務員の保険加入期間37.5年を民間と同じく40年に延長する構想を発表したものだから、公務員組合がいきり立って猛反対。 公務員は革新政党の重要な支持層であるだけにここで彼らを怒らせたら、次期大統領選挙も危なくなる。そこでジョスパンは3月27日、電撃的に選手交代、公務員を逆なでた大臣たちを引き下げジョーカーで切る。それもただのジョーカーでなく、15年来党内で犬猿の仲だった弟分ファビウス元首相を新経済相に、教育改革”地獄”にはまったアレーグル教育相の後釜に、なんとその前日までパリ市長選候補になるはずだったラング元文化相。 国民議会の議長席で退屈しきっていたファビウス氏は政権の最前線に突進し、ラング氏はパリ市長への夢をポイと捨て、昔とった杵柄、教育相に鞍替え。彼は、92年教育相だったジョスパンがやはり教育改革で教員の攻撃に合ったときその火消し役の後任となり、今度もアレーグル教育相改革案のもみ消し役に。「まず話し合い、時間をかけて」のやんわりスタイルで教員達の怒りを静めるには適任。 新公務改革相には、交渉力に長けるサパン氏をあて、公務員の機嫌をとりながら公務改革を進めていく作戦だ。 一方、キャスティングを誤ったトロットマン文化相には郷里ストラスブールに帰ってもらい、後任に、柔らかな声と物腰ながら何事にも決然と対処するタスカ元コミュニケーション相を抜擢。 ハードパンチャー、ジョスパンが、俊英なクリエーター、ファビウスと若者に受けるラングを抱き込み、2002年大統領選に向けて”耐震”内閣に改造、台風のおかげで瓢箪から駒が出たというわけだ。(君) |