初めてのショー。 N° 451 2000-02-01 1月15日に始まったバーゲンと時を同じくして、2000年・夏のオートクチュール・コレクションが始まった。5日間にわたって発表された大御所格のデザイナーたちの作品は新聞やテレビの画面を華やかに飾ったけれど、若手デザイナーたちも大健闘。「オートクチュール」ではなく、謙虚に《クチュールoff》と呼ばれる彼らのショーだが、創造性を発揮しながら、一点ずつオーダーメードの服づくりをしていこうという姿勢と情熱は《in》も《off》も変わらない。 今回のショーでクチュール界にデビューしたジャン=フィリップ・トリニーさんのアトリエを訪ねた。フリーのスタイリストとしてイタリアン・ヴォーグ、ロメオ・ジリのコレクションや、ジョン・ガリアーノがパリでショーをする以前のロンドンのコレクションなどに携わった後、イヴ・サン=ローラン、クリスチャン・ラクロワのアシスタントを経て今日に至る。コレクションを発表すると決心したのは去年の9月末。チーム結成、予算集めなど、周辺の段取りに時間がかかってしまい、服作りの時間は実質2カ月という、きついスケジュールのなかで絹モスリン、タフタ、ギャバジンほか、アルミ糸やエラストマー/リクラ合繊など最新の素材を使って約25点を作り上げた。ショー当日、舞台裏では準備の時からショーが終わるまで「ジーペ!ジーペ!」(Jean-Philippeの略) と、スタッフが最終チェックのために彼を呼ぶ声が止まなかった。16区の近代的ホテルの地下でメイク、ヘア、着付けを終えたモデルたちは、ひとりひとりエレベーターで一階へエスコートされ、ショーの舞台であるホールに現れた。ウォーキングが終わるとエレベーターで地下へ戻る。「今日の実社会に呼応する服」にふさわしい演出だ。コレクションのコンセプトは“no couture”。いわゆる〈オートクチュール〉ではないが、質のいい素材を使って現代的な便利さ、自由さ、快適さを追求しながら一点ずつ服を作る楽しみを大切に考える。ショーはフランスのアート界第一線で活躍するファブリス・イベール氏のプロデュースによるもの (ジャン=フィリップは広い広いアトリエをイベール氏とシェアしている)。これからもアートとモードの交差点上の服づくりを試みるつもりだ。 デビューのショーは成功裡に幕を閉じ、ヘラルド・トリビューンやル・フィガロ紙などが称賛の記事を掲載した。次回のショーは7月。「あと6カ月あるから、じっくりいいものを作りたい」と次の目標を見据える。「自分の服を多くの人に着てもらいたい」という願望もあるので、9月からプレタポルテのコレクションにも参加する予定だ。今回発表した作品のうち、ギャバジンのパンツ/スカートスーツなどは春に発売される予定だが、まだ販売先は確定していない。アトリエの一角に設けられた新しいショールームに、これから未来のバイヤーたちがやってくる。(美) Share on : Recommandé:おすすめ記事 マスク着用必須サイン/パリ、ボルドー、トロワなど 包んで、結んで、風呂敷ドレス。/ジュイ布美術館 Les Grands Voisins / パリ14区 サパンの捨てかた。 ただいま、ノエルの飾りつけ中! また、スカーフ論争。 Gare du Nord 〜 Place de la Nation