パン屋さんのお菓子たち

bûcheは薪 (たきぎ) のことだが、薪の形をしたノエルのケーキもbuche。ロールケーキの表面にクリームが木の皮状に絞ってあってムラングのキノコや小人がのっかっている、大小さまざまの薪がパン屋さんのショーウインドーに並びはじめると、ノエルも近い。
パン屋さんには面白い名前のケーキが多い。ソフトボール大のムラングにクリームを塗って、チョコレートの粒をまんべんなくまぶしたものはtête de nègre。フランスでも日本同様nègre (黒んぼ) は差別用語、指さしながらモジモジ「そのお菓子をください」とつぶやくと、パン屋さんのおばさんは店中に響きわたる大声で「tête de nègre?」と聞き返す。耳まで真っ赤になって「そうです。一つだけ」と僕。この取材に行った日は、たまたま入ってきた黒人のおばさんが「黒んぼの頭ひとつ」と堂々と注文していたから、こちらが意識過剰なのかもしれません。
大きなシューの上に小さなシューがのっかり、どちらもチョコレートの黒い衣をまとい白いクリームのひだ飾りがついたケーキは、religeuse (修道女) 。そういわれれば、そんな雰囲気もなくはない。ドーナツ形のシューにプラリネのクリームがたっぷりと挟まれたものは、Paris-Brest。1891年に、パリ郊外のパン屋さんがパリ—ブレスト間の自転車レースにあやかって作り大当たりしたものだという。チョコレート味とモカ味の2つのシューが危うくくっついているものはdivorcé(離婚者) 。ほかにもéclair (稲妻) 、palmier (ヤシの木)、congolais (コンゴ人) …。(真)


Tags: