「1997年、パリのFestival d’automne で『CURE』を上映した時が、僕の映画をフランスの方に観てもらった最初の機会でした。僕はすでに20本近い映画を撮っていたので、日本にまだこんな映画監督がいたのか?と、“イリオモテヤマネコの発見”のような驚きがあったのでしょう…」
これがフランスを訪れる最後の機会になるのではと、「カタコンブまで見学した」、という黒沢清監督だが、今年になって事態は一転。カンヌ映画祭での『カリスマ』上映も引き金となり、今秋は Forum des images、オルレアン映画祭、リヨン映画祭から、上映ラブコールがほぼ同時期に殺到し、現在パリでは『CURE』が上映中だし、12月には日本に2カ月先立ち『カリスマ』が劇場公開される。 「自分が “日本人” 監督であるということは、映画を観てもらう限りにおいては意外なほど意識していません。どこの国でも映画を積極的に観てそれについて語ろうとする人たちは同じだと思う。ただフランスのお客さんは一人一人が批評家ですね。映画の分析が客観性を持っている。日本人だと映画マニア、シネフィルどまりですが。よく驚かれるのが、2週間から長くて1カ月の撮影期間と、フランスでの最低予算の作品よりもさらに少ない製作費。『規制は何もありません、さあ撮ってください』と言われても、多分僕は今とそう変わらない映画を撮るのでは、と想像します。プロデューサーがどうした、お金がどうしたという以前に、映画というのはいろいろな限界や規制が最初からあるものだから…」
現在大映でホラー映画を準備中。観客に媚びず、感情過多に走らず、静かにゆっくりと体内に溶け浸透していく後味を持った、Made in Kurosawa 以外の何物でもない作品になることだろう。
(1999/11/10 インタビュー: 瑞)
●The Big One
前作の「Roger and me」ではゼネラル・モーターズに思い切り噛みついたマイケル・ムーア。今度のドキュメンタリーでは、莫大な利潤を上げながらも「国際競争に負けないためには」とか「将来に備えて生産力を向上」などと工場をメキシコやインドネシアに移し、平気で首切りをすすめる企業をやっつける。メキシコ人労働者の一時間のサラリー用にと額面65セントの小切手をプレゼントするなど、そのふてぶてしいユーモアは、この困難な時代の元気回復剤! ナイキの社長もみごとにはめられる (写真)。とにかく30秒に一回、超満員の映画館が大笑いで揺れるという、今年の喜劇大賞! (真)