Roussette a la grenobloise
皮をはがれ、ピンク色の細長い体を横たえているルセット (ソモネットともいう) は、元々は小さなサメ。キロ50フランくらいだが、頭やハラワタがないので、ずいぶんと経済的だ。その上、やわらかな軟骨が真ん中を走っているだけで、子どもたちにも食べやすく、どんどん利用したいものだ。エイに似た淡泊な白身で、ケイパーや黒コショウなどをきかせたソースが合う。下で紹介している料理の本 “La bonne cuisine” から、アラン・デュカス氏のグルノーブル風を作ってみよう。
ムニエルにした魚に、レモンの角切り、ケイパー、クルトン入りのソースを添えるのがグルノーブル風です。ルセットは、一人300グラム、人数分に筒切り。
まず、ソース用に、食パン4枚の耳をとってサイの目に切り、焼き色が付くまでオリーブ油で炒めクルトンを作る。レモン3個は皮をむき、さいの目に切る。
フライパンにバターを大サジ3杯とり、押しつぶしたニンニク2片を加え、ごく弱火にかける。サメには塩、コショウをし、小麦粉をまぶし、余分な粉をはたき落として、バターが泡をたて始めたらフライパンへ。きれいな焼き色が付いたらひっくり返す。途中で、ニンニクのいい香りがついたバターを何度もかけてやりましょう。
この間にソースを仕上げる。小鍋にバターを大サジ4杯とり、キツネ色になってきたら、さいの目にしておいたレモンとケイパーを好みの量加える。レモンが熱くなったら、最後にクルトンを加えて混ぜ合わせ、塩、コショウで味を調える。焼き上がったサメを皿にとり、その上にグルノーブル風ソースをのせましょう。
レモンの酸味、ケイパーの風味、バターやクルトンの香ばしさが、ニンニクの香りがするサメの白身を引き立てている。付け合わせは、皮付きのままゆでたジャガイモがいちばんだ。ワインはあまり辛口でない白か、南仏の ロゼがよさそうだ。ビールもいける。(実)
●台所の本|Francoise Bernard & Alain Ducasse /La bonne cuisine (Hachette)
この新刊は、家庭料理のレシピを書いてきたフランソワーズ・ベルナールと三ツ星レストランの名シェフ、アラン・デュカスの共著。サバ、子牛の肉、クルジェット、イチゴなど52の食材をそれぞれ2品ずつ作って、自慢の腕を競い合っている。たとえばマグロなら、ベルナールは、プロヴァンス風とトマト煮、デュカスは、オリーブ油漬けに東南アジア風サテー風味という具合だ。面白いのは、相手の料理に対して、私ならこうするといった感想が掲載されていること。両者の食材へのアプローチの違いがはっきりと見えてきて学ぶことが多い。139F。(実)
●Veau de la mer
“海の子牛” が魚屋に並ぶことがある。もちろん子牛ではなくて、これは大きなサメ。ステーキ大の切り身になって売られている。フライパンで焼いて、ケイパー入りの焦がしバターソースや、唐辛子をきかせたトマトソースで。でもどこか大味で、ルセットの方がうまい。
●ルセットのマリネ
サバのマリネを応用し、コリアンダーの風味を生かした (実) 風です。まず、漬け汁の準備。鍋に白ワイン250cc+ワインビネガー100cc+水150ccをとる。そこへニンジン1本、玉ネギ1個を薄く切って加え、ブーケ・ガルニ、コリアンダーの実20粒を入れ、塩、コショウ。これを火にかけ、20分ほど静かに沸騰させて味をよく引き出し、冷まします。
ルセット1キロは適当な大きさに筒切りにし、天火皿にきっちりと並べる。この上から漬け汁を、野菜やスパイスともどもかけ、アルミホイルで皿全体をおおう。これを直接ガスの弱火にかけ、沸騰したら3分ほどで火から下ろす。これだけのこと。冷ましてから食べるのだが、その日より、翌日、翌々日の方が味がしみてずっとうまくなる。
前菜として食べてもいいけれど、たっぷりとサラダを添えれば、立派な一食になる。大きな皿に、ルセットの身をほぐして盛り上げる。漬け汁少々と上質のオリーブ油を振りかけ、新鮮なコリアンダーの葉をみじんに切ったものをたっぷりと散らす。そのまわりに、ゆでジャガ、トマト、キュウリ、アボカド、ラディッシュなどを彩りよく盛りつけ、二つに割ったゆで卵を飾りましょう。ビネグレットソースやヨーグルトソース、あるいはマヨネーズなども添えて、ワイワイガヤガヤ楽しみたい。夏の熱い日にふさわしいごちそうです。サバとルセットを半々にして、それぞれのうま味の違いを楽しむのも面白い。