Court-bouillon de pageots
目が輝き、鮮やかな桜色の体がピーンと張りつめた、中くらいのタイが魚屋に並んでいる。キロ39フランと安い。さっそく2尾買ったら1キロちょっとあった。塩焼き? 刺身にして頭やアラは潮汁? などと迷ったが、久しぶりに、カリブ海風のクールブイヨンにすることにした。クールブイヨンというと、ふつう魚やカニなどを煮るダシのことだが、マルティニク島やグアドループ島では、唐辛子がピリッときいた煮魚料理を指す。
ウロコをとってハラワタをだし、丁寧に洗って水気をぬぐう。なるべく底が広い鍋に2尾並べて収まらないようなら、頭を切り取る。僕のソトゥーズにはギリギリで収まった。レモン (ライムだったら最適) の絞り汁3個分、みじんに切ったニンニク3片、塩小サジ1杯、唐辛子の粉poivre de Cayenneやタバスコソース適量、水大サジ2杯を振りかけ、1時間ほど置いておくのだが、味がよく染み込むように、魚を数回ひっくり返したり、腹の中までハケで漬け汁を塗ったりしたい。
魚を取り出す。漬け汁は別にとっておく。ソトゥーズをさっと洗って水気をぬぐったら、油を多めにとり、cibouleという細ネギ3本をみじんに切ったものを炒めていく。なかったら玉ネギで代用。透き通ってきたら、湯むきした完熟トマト2、3個をやはりみじんに切って加える。魚を戻し、水をヒタヒタになるまで入れ、タイム3枝、パセリ3枝をのせる。沸騰してきたら火を落とし、7、8分、ここでタイをひっくり返してもう7分、魚の大きさにもよるが合わせて15分ほどで煮上がる。最後に漬け汁を注ぎかけ、塩、コショウで味を調え、再沸騰したら出来上がりだ。みじんに切った細ネギを散らして食卓へ。これで4人分。小ダイだったら4尾使います。タイがない時は、真ダラの切り身を使ってもおいしくできる。
付け合わせはクレオール風ライス、といっても日本とほぼ同様に炊きこんだご飯のことです。(実)
● 材料 (4人分) : 600グラムほどのタイ2尾、細ネギ3本、トマト2個、レモン3個、ニンニク3片、poivre de Cayenneやタバスコソース、タイム、パセリ、油、塩、コショウ。
フランスの鯛さまざま
●daurade royale
地中海やガスコーニュ湾でとれ、大きいものは全長60センチ、3キロほどになる。ウロコは銀色に輝いている。頬のところに金色の斑点、目と目の間にやはり金色の三日月形があるのですぐにわかる。繊細な甘みを有し、その上身がみごとに締まっているので、最高級の刺身になる。塩焼きにしたり、ハーブをきかして天火で焼くなど、シンプルに調理したい。値段は一番高く、キロ100フラン前後です。
●pageot
やはり地中海やガスコーニュ湾でとれる。小さな青い斑点を持った桜色で、真鯛あるいはその親戚の鯛でしょう。全長50センチくらいになる。1カ月くらい前にマルセイユに行ったら、港の市場で死後硬直状態の活きのいい中くらいのパジョが売られていた。上品な甘みを持った風味が素晴らしいが、やや身に締まりを欠く。刺身、チリ鍋、塩焼き、潮汁などの和風に最適だし、プロヴァンス風に煮たり、天火で焼いたりしたい。地中海沿岸の人たちは、小さめを揚げたものが好物だ。キロ70フラン前後。
●daurade rose
やや細長い鯛。大きいものはエラの脇に黒い斑点を持っている。主に大西洋岸でとれる。味は落ちるが、白ワインで煮たり、フヌイユをきかせて焼いたりしたい。
●daurade grise
大きいものもみかけるが、ふつう30センチ以内の小さめの鯛で、ツヤのない灰色をしている。そのためか、たくさん漁獲されるためか、値段はキロ30フラン前後と安い。ちょっと磯臭いのが難で、僕は活きがよかったらそれでも刺身にするけれど、マリネしてから焼いたり、香りよく揚げたりするのがいいだろう。
●潮汁の作り方
鍋でお湯が沸騰したら、粗塩を加えるのだが、しっかりと塩味をきかせると、タイの生臭さが消える。ここで適当な大きさに切ったアラや頭を加える。再沸騰したら、たんねんにアクをすくいながら15分も煮れば出来上がりだ。火を止め、醤油をちょっと垂らす。三つ葉などを加えたらぜいたくだが、なかったら縮れていないパセリをみじん切りにしたものを少量浮かせたい。「オカワリ!」