注文が多いのは 『フレンチ・マニキュア』です。


 巷では女性が色とりどりのマニキュアをつけたり、爪に絵を描いたり、ピアスをしたり。我が爪は何もしてもらっていないどころか、夕方には汚れて黒くなったりという哀れな状況だ。夏だし、生れて初めてきちんと手入れを施してやることにした。

 17区のInstitut Laugier に電話をして予約を入れた。創業以来20年という手と爪(足も)の手入れ専門店で、〈Super Nail〉とアメリカ風のピンクのネオンがついたこの店の前を通ると、いつも店内は女性でいっぱいで、楽しそうで、かねてから一度行ってみたいと思っていた。朝一番、開店と同時の10時の予約にしたが、行った時はもうすでに8つのテーブルには客が4人ほど座って手入れをしてもらっていた。全員メイクは完璧、ヘアもきちっとセットされ、スプレーで固めてあるようで〈これ以上どこを手入れする?〉と思うくらい、体や持ち物の末端まで気を配っている40~60代のマダムたちだ。
 私を担当する若さいっぱいのジュディットさんは、少し遅刻してやって来た。私の向かいに座ると机の下からチップ用の貯金箱を出して、机上に置いてお仕事開始。(隣のお客さんにこっそり聞けば、チップは料金の10%くらい、とのこと)基本的な手の手入れをお願いする。手全体にクリームを塗ってマッサージしてもらい、温めたクリームのなかに指先を突っ込んで待つ間、もう片ほうの手を同様にしてもらう。柔らかくなった甘皮をジュディットさんがどんどん切り落としてゆく。「アーモンド型か丸型か、角張った爪のどれにしましょうか」と聞かれても判断できないから、ジュディットさんに角張り爪、と決めてもらう。ヤスリをかけ、艶だしクリームをつけ、革でこすってもらい、プロテイン入りのベースをつける。マニキュアを塗る前に、鞄から財布を出す時にせっかく塗った爪を傷付けてしまわないように、お支払い。車のキーを出したりなどの手作業も、ここでできる限り済ませるようにしたい。
 注文の多いのは『フレンチ・マニキュア』だという。フランスではかつて女性だけでなく一部の男性も爪を磨く習慣があったそうだ。羊や山羊の裏革などで爪を磨くと、くすみが取れて健康的に見える。それを見たアメリカ人が『フレンチ・マニキュア』を考え出した。爪の先端部分には白のマニキュアを塗り、その上から全体に透明のマニキュアを塗るとピンクに白の色が映え、自然で魅力的な爪ができる。これが『フレンチ・マニキュア』だ。ネイル・サロンの人たちは”ラ・フレンチ”と呼ぶ。これが『フレンチ・ペルマナント』になると、爪先端に糊で人工爪を貼り、その上から透明ジェルを塗る。長持ちするのがメリットだ。
 日本では平安時代から鳳仙花の花弁をつぶして発酵させて得た赤い液汁を、爪に何回も塗っては磨いて赤く染めたり、江戸時代には紅花を使ったりしていたとか。自然派マニキュア「ラ・ジャポネーズ」なんて今っぽくていいのではと思うのだけれど。(美)
Institut Laugier
39 bis rue Laugier 75017
01.4227.2503