「場所」そのものへのアプローチ。 ガブリエル・オロツコ展

 昨年パリ近代美術館で開催されたオロツコ (1962年メキシコ生まれ) 展では、作品はそれぞれが完結するものであったが、今回の展覧会では、空間と時間を刻む「場所」そのものへのダイレクトなアプローチが試みられ、作品の概念がまったく変わっている。
 彼の作業はまず、ギャラリーを半分に仕切っていた漆喰の壁を取り壊すことから始まった。壁があったその場所に、現場で職人に作らせた大きなテーブルが置かれる。壁の除去、テーブルの作製という二重の作業から出た廃物—木の板、壁のかけら、取り除かれた壁そのもの—は全部保存され、新しい環境の中で「リサイクル」されることになる。
 オロツコは、まず壊した壁から生じたエレメントを、入り口近くの壁に沿って並べた。小さなものから大きなものまで、それらの表面に黒鉛で円を描く。地下に展示された木の板にも、円が描かれるか、または丸い穴となって現れる。続いて地下鉄アーヴル・コーマルタン駅通路の壁から写し取られた、円のモチーフのフロッタージュ、そして最後に辿り着く7枚の写真が彼の作品を読む鍵に…。
 これら一連の “もの” は、匿名の、あるいは職人的な作業を写し取り、場所そのものを再定義していく。ただひたすら線と面に価値が置かれ、通常の彫刻が持つ要素 (フォルム、マッス、ボリューム) からは離れていく。
 線はこのアーティストにとって、自己を作品に関与させる唯一の手段だ。彼の線は「円」という概念を通して現実化され、様々な要素の複合体から正面性frontaliteを引き出すかたわら、物質性を打ち消すという視覚的な仕掛けを作る。一方、面は、木片、漆喰の塊などを壁にとことん押しやる方法で強調された。そしてテーブルの上の漆喰のかけら。きわめて注意深く置くという行為によって、ただのかけらにすぎなかった物体は尊厳を持ち始め、「芸術」と「実在」との間にあるあらゆる隔たりは消滅する。
 持続性のある「場所」に行為を配し、それによってその「場所」を征服し直す、そこがオロツコの仕事の魅力であり、注目に値する点である。(マルク/編集部訳)

*Galerie Chantal Croussel :
40 rue Quincampoix 4e 7/30日迄


“Topkapi a Versailles”
 8月15日まで、ヴェルサイユ宮殿で、長い間秘宝となっていたトルコのトプカピ宮殿の美術品の多くが公開され、当時の宮廷生活のありさまを生き生きと伝えてくれる。イスタンブールにあるトプカピ宮殿は、15世紀から19世紀にかけて君臨していたオスマン帝国のスルタンの居城であり、17世紀から18世紀にかけては、ヴェルサイユと肩を並べる荘厳な宮殿だった。
 この展覧会のため、トルコ政府は、金の玉座をはじめとする国宝級コレクションの特別貸出しに応じた。トプカピ宮殿は日本人にはあまり知られていないかもしれないが、、ヴェルサイユ宮殿とは違った素晴らしさを発見できる機会になろう。
 カリグラフィーへの強い関心、あるいはスルタンが着用していた金糸を織り込んだ、カフタンと呼ばれる着物に似た絹の服など、東洋と西洋の境目にあるトルコ文化は、日本文化とも類似点がある。
 展示にもいろいろな工夫が凝らされている。暗くひっそりとした通路の両側に、宝石、金細工品、細密画、中国からやってきた陶器などが並べてあり、当時の宮殿にいるような雰囲気が再現されている。トプカピ宮殿の過去の栄光が戻ってくるようだ。(ニコル)
*展覧会場入口 : E (ミニ電車の停留所そば)
*8月15日まで。11h – 18h。月休。
入場料50F /38F (10~25歳、すでにヴェルサイユ宮殿の入場券を持っている人)
●Pierre BISMUTH
ビデオ近作。7/10迄 Galerie Yvon
Lambert :108 rue Vieille-du-Temple 3e
●<家具とオブジェ1960-2000年>展
Colombo, Paulin からSzekely, Stark。60年代から今日までの代表的なデザイナーによる家具・オブジェ。7/24迄
Galerie Kreo :11 rue Loise-Weisse 13e
●Djamel TATAH
大きな画面に等身大で描かれた、物語性のない無口な人物。7/24迄
L.&M. Durand-Dessert: 28 rue de Lappe 11e
●Niki de SAINT-PHALLE <Trace>
自伝の出版を記念して、その原画を中心とする同タイトルの作品展。7/31迄
Galerie JGM : 8 bis rue Jacques-Callot 6e
●Robert DELAUNAY (1882 – 1941)
印象主義、キュービスムから抽象へ。「エッフェル塔」シリーズや、当時最も急進的なコンセプトで制作された<純粋絵画>、具象形態を省き色面だけで構成された円形シリーズなど、1906-14年の作品。8/16迄  ポンピドゥーセンター
●Eugene JANSSON <スウェーデンの夜想曲>
ストックホルム出身の画家 (1862 – 1915)をフランスで初めて紹介。風景や水浴びをする人物を描く作品に流れるブルーのトーン。8/22迄 オルセー美術館 (月休)
●The Promise of Photography
シンディ・シャーマン、メープルソープをはじめボルタンスキー、カバコフなどを含む35人、約100点の写真。8/23迄 Centre National de la Photographie :
11 rue Berryer 8e (火休)
●Magdalena ABACANOWICZ / Beverly PEPPER
女性アーティストの立体作品をパレ・ロワイヤル庭園に展示。9/1迄
Jardin du Palais Royal 1er
●<Us and them>
写真家カップル、ヘルムート・ニュートンとアリス・スプリングス。お互いを、または同じ被写体を捉えるテイストの違いが興味深い。9/5迄
Maison europeenne de la photographie : 5-7 rue de Fourcy 4e (月火休)
●<抽象後の絵画>展
Barre, Degottex, Hains, Hantai, Villegleの50-70年代の作品。9/19迄 パリ市近代美術館 :11 av.du Pdt-Wilson 16e (月休)
●ドガの写真展

視力が落ちた晩年1895-96年の2年間、写真に熱中したドガ。身近な人々のポートレートや、彼の絵画作品を彷彿させる踊り子、裸婦、風景など。8/22迄
国立図書館 : 58 rue de Richelieu 2e (月休)
●Pipilotti RIST / Martine ABELLEA
Ristのビデオ・インスタレーション。Abellaはシミュレーション・ホテルを設置。9/19迄 パリ市近代美術館 (月休)
●Keith HARING <Made in France>
フランスで制作したグラフィティ作品など約70点。彼のパワーを再発見。9/22迄
Musee Maillol : 59-61 rue de Grennelle 7e