先号のカンヌの賞の結果に、もう一言付け加えさせてもらうと… 男女優賞が素人に行ったことに大いなる “?” を感じた。女優の卵である『Rosetta』のエミリー・ドゥケンヌはまだしも、『Humanite』の二人は、本人の生来の個性を、監督がカメラの前に引っぱり出してきて、まんま頂いたという感じで、限りなくドキュメンタリーに近い存在感。彼らに演技賞 (Prix d’interpretation) をもって行かれると、一生懸命に役作りしたプロの役者達の面目はどうなる? 同様に、超リアリズムで勝負したこの2本に賞を集中させてしまうと、ファンタジー系の映画作家(クローネンバーグみたいな!?)、そしてそういう作品が好きな映画ファンがシラケてしまいはしないか? 両作品とも立派な映画なので、勇気ある決断と褒めたい一方で、トゥーマッチな賞配分であった。過ぎたるは及ばざるが如し…? さて、なんと今年は、”ある視点” 部門に小林政広『海賊版』、”監督週間” に黒沢清『カリスマ』と諏訪敦彦『M/OTHER』、”批評家週間” に早川渉『7/25』、映画学校の卒業制作を対象に昨年新設された “シネフォンダシオン” という部門に山崎たつじ『夢二人形』、そして “コンペ” の北野武『菊次郎の夏』と、6本もの日本映画がカンヌで公式に上映された。これは前代未聞であった。日本映画は元気を取り戻したのか? いずれも作家の個性をしっかりと押し出したバラエティーに富んだ作品群。エヘンとちょと胸を張りたくなった。とりわけ一部ですでにポスト北野的に騒がれ始めている黒沢、また国際批評家連盟賞をゲットした諏訪、両監督の極めて近未来的な開花—すでに作品の完成度では開花済みだが、世間に認知されるという意味での開花—に今から胸を踊らせている。(吉) ●Another day in paradise |