日本人のお客さんはチップに几帳面だ。
マルティニーク島出身の運転手、コルシャニさんに苦労話を聞いてみた。
「仕事時間が自由なのがうれしいし、失業がないのもこの職業だけだ。私は週4,600フランでタクシーを借りているから、少なくても一日200kmは走らなければならないが、それがなかなかむずかしい。一日中座っているから背中が痛くなるし、太りやすい。夜運転すると、目が痛くなる。
以前は仕事時間を超過しても、ごまかす運転手が多かったが、この10年間で仕事時間がしっかりと守られるようになってきたのは、いいことだ。毎年CDC (Certificat de Capacite タクシー運転手の能力証明)を更新しなければならない。4、5カ月間だけ働いて、あとは祖国に帰ってのんびりするという外国人運転手を取り締まるためだ
が、1年のうち10カ月働いたことを証明できないとCDCを取り上げられる。1988年にこの仕事を始めた時、パリでの個人営業のライセンス料は24万フ
ランだったが、今では60万フランが必要。現在せっせと貯金をしているところだ。
日本人の利用者? とても親切という以外にこれといったことはないなあ。私は英語がうまく話せないが、日本人は発音があまりよくない。タクシーに乗ったら必ずチップ、と言われているらしく、いつもチップを忘れない。サンチーム銅貨を盛りだくさんもらうこともある」
「20年前からこの仕事をしています。週50時間働いて月10,000フランの収入しかないけれど、夫と共稼ぎなので生活できます。今日は、45分も待って、ようやくお客さんを乗せたけれど、短距離だったのでたったの21フランの収入!」
女性運転手はまだ10%だが、「子供の世話と料理をしていた方が無難」といったような男性運転手の声は聞かれなくなった。
キビシイ雇われ運転手。
パリとその近郊で、タクシーは15,000台走っている。住民1000人当たり2.7台 (マドリッドは4台、ロンドンは2台、アムステルダムは0.6台)。そのうち、約半分の8000台は個人営業だが、個人営業のライセンスを取得するためには、50万から60万フラン払わなければならない。個人営業の運転手は、平均約20万フランの車を買って運転している。一日10時間から11時間の労働で月平均14,000フランの収入になる。
それに次ぐ約6400台のタクシーの運転手は、タクシー会社から、週約5000フランで車を借りている。燃料費、社会保険料などを差し引くと、月平均11,000フランくらいの収入になるが、有給休暇や失業手当の権利はない。タクシーをレンタルしている大手の会社は、G7 (2500台)、Taxis
bleus (1900 台)、Alpha (800 台)、ARTAXI (450台)。
残りは雇われ運転手で、日給59フラン+一日の収入の30%+チップで、月9800フラン前後の収入にしかならず、キビシイ。彼らの車は、2人の運転手でリレーされながら、一日24時間のうち20時間フル走行し、掃除されることもまれなためか、”taxi-poubelleごみ箱タクシー”という不名誉なあだ名をもらっている。
●1995年にタクシーに関する法令が改正され、ライセンスの発行数が制限されたり、CDCの取得がむずかしくなったりするなど、運転手にとってだんだん厳しくなってきている。郊外に登録されているタクシーは、パリで客を乗せることができなくな
り、その逆に、パリのタクシーは郊外で客を乗せることができないなどと利用者にとっても不便。空車なのに止まらない車が多くなったのは、法令のせいでもあるのです。
●大手のタクシーは、2年前からドアに旅行代理店、その他の広告を貼って走っている。昨年は、バシュングの新アルバムのキャンペーンの一環として、彼の新曲を流しているタクシーがあったし、今年になってからは、シュシャール社とタイアップして、500台あまりのタクシーでチョコレートが無料で配られた。チョコレートの売り上げが伸びたかどうかははっきりしないが、チップが増えたことは間違いない。
●郊外や地方では、市役所とタクシー会社が契約を交わし、日曜・祭日などに、安い料金で交通機関の肩代わりをするところが増えている。例 : サン・クルーのTaxi – service、サン・ブリウーのTaxitub、ディジョンのP’titbus、ストラスブールのTaxibusなど。
タクシーの運転手になるための受験勉強。
CDC を得るための検定試験はかなりむずかしく、少し古いデータだが、1975年を例にとると、4675人受験して、合格者は60%ちょっとの2800人。
その受験準備のためのタクシー学校が各地にあり、授業料は8000~14,000フラン。パリ郊外のサン・トアン市にあるこのEcole de Taxisは、大手のタクシー会社G7 が経営している。生徒たちは、3カ月にわたって、法規、安全運転、会計、パリの道路地図、観光情報などをみっちりと学ぶ。
CDC は2段階に分かれている。
1) 国家資格 : フランス語の能力、タクシー運転手が知っていなければならない規則、交通法規、応急処置や安全性に関する知識などが問われる。
2) ローカル資格 : 運転技術、地域の道路地図についての知識などが問われる。
以上2段階の検定試験に合格すると、晴れて正規のタクシー運転手になれる。
タクシーの料金
●基本料金は13F。
●パリでは、タクシーの料金は A、B、C の3段階に分かれている。
A : 3.23F/km‐パリ市内
B : 5.10F/km‐Hauts-de-Seine県
Seine-St-Denis県
Val-de-Marne県
C : 6.88F /km‐それ以外の地域
*以上は7時から19時までの料金で、19時から7時までは、A料金はB料金に、B料金はC 料金に移行する。C料金は変わらない。
●加算料金 : 駅で乗車すると5F。動物は3F。5キロ以上の荷物は1個5F。スキー、自転車、乳母車のようなかさばるものは6F。
●待ち時間は1時間につき120F請求される。
●小切手で支払う場合は、降りる時に断られたりしないように、乗車前にその旨を運転手に確かめておいた方がいい。
●トラブルがおこった場合は、
Service des taxis : 36 rue des Morillons 15e M!Convention 01.4531.1480
●主なタクシー会社 :
G7 (01.4739.4739) Taxis bleus (01.4936.1010)
Alpha (01.4585.8585) ARTAXI (01.4203.5050)
●インターネットで予約 :
http://www.paris-service-voyage.com (パリ)
http://www.francetaxis.com (フランス全国)