知事暗殺事件から放火事件まで。

 4月19-20日未明、コルス島はアジャクシオ付近の海辺の簡易レストラン(屋根がヤシの葉で覆われているので “パイヨット”と呼ばれる)「Chez Francis」にガソリンをかけて放火したのは憲兵隊、それもボネ前知事直属の治安部隊(GPS) 5人の仕業と分かり、島民だけでなく国民も唖然。
 5月6日、ボネ前知事以下、マゼール憲兵隊長、パルディニ官房長官、憲兵隊員5人をパイヨット放火事件容疑者として、パリのサンテ拘置所に移送。政府はGPSを解散し、新知事に、住民との対話を重んじるラクロワ氏を任命した。
 昨年2月6日、エリニャック元知事が暗殺され、後任のボネ前知事は、テロと汚職、マフィアが巣くうコルスを”法治国家”にもどすことと、自ら捜査にあたる意気込みで着任した。そして憲兵隊の中にもう一つの部隊GPSを設け、情報活動・アクションともに国家警察と張り合う神風的モウレツ知事として独走していった。
 コルス島の海岸には約200軒のパイヨットが立ち並び、そのほとんどが不法建築であるためボネ知事はまずそれらの除去作戦に全力投球。なかでも独立派の活動家や地元の有力者が出入りする Chez Francisに注目した。その主人フェロー氏が4月初めに県庁に、10月末日に小屋を取り壊す誓約書を提出していたにもかかわらず、ボネ知事はオフシーズンを待たずに、忠臣マゼール大佐が率いるパイヨット放火作戦にゴーサインを送っていた疑い。
 本土から忘れられがちなコルス島には戦後の経済復興の波は寄せてこず、産業も芽生えなかった。アルジェリア戦争後フランス人引揚げ者”ピエ・ノワール”たちが入植し、一部地域に農業が根付いていったが、70年代以降島民の間に民族主義独立運動が盛んになっていった。以来独立過激派の爆弾テロやマフィアの殺傷事件に彩られ、”島”は無法地帯化していった。
 80年代以降、各政府とも内相が代わるたびにFLNC(コルス民族主義解放戦線)など民族主義過激派への弾圧と懐柔策のどちらかを切札にコルス問題に対応し、そして相続税や自動車税の免除など”アメ玉式”特例によって島民の機嫌をとってきた。
 政治的重大事件(affaire d’Etat)に発展したパイヨット放火事件でジョスパン首相とシュヴェヌマン内相は野党の総攻撃を浴び5月25日、保守派3党(RPR/UDF/DL) の内閣不信任案を突きつけられたが、不信任票が過半数に達せず危うく切り抜ける。
 と同時に22日、アジャクシオでは反テロリスト捜査班が、知事暗殺計画の中心人物と見られる元FLNC活動家アラン・フェランディ(レンタカー会社勤務、39歳)ほか容疑者・参考人8人を一斉検挙。24日、そのうちの3人が知事殺害への直接関与を自供、未逮捕は知事射殺の主犯のみとなり、15カ月間の捜査が終局を迎えた。
 エリニャック知事暗殺事件からパイヨット放火事件までの大河刑事劇の結末(?)が、今後コルスの民族主義運動にどのような影響をもたらすか注目したい。(君)

コルス島住民の大半は独立に反対
47% 国民投票に賛成
43% 国民投票に反対
69% 独立に反対
15% 独立に賛成
* BVAが4/29日~5/2日に本土950人/島民504人を対象に行った世論調査(Le Monde : 99 / 5 / 15)。