雨にも太陽にも恵まれて、草木がメリメリと元気なリュクサンブール庭園。5月中旬にはオランジュリーから橙(古いもので250歳から300歳)、夾竹桃、石榴やナツメ椰子などの植木180本余りが庭に出され、一段と賑やか。そんな緑豊かな公園で〈回転木馬1フラン値上げ〉のニュースを耳にした。
1879年に庭園内に設けられた手動回転木馬は、1980年代に電動になった。土地の使用料を上院に払って営業している木馬の所有者は、1回7フランから8フランに値上げする方針。上院からも承諾を得たのだが、よそにはまだ無料の木馬があるので、値上げに踏み切れないでいる。オペラ座を作ったガルニエ設計の回転木馬には昔、白い象の木馬(木象) があって、リルケが詩のなかで謳ったという。
木馬の背に乗った子供たちは、ある程度スピードが出てきたところで手に持った木の棒を使い、巨大な梨の実からぶら下がる輪っかを引っ掛けて取る。
1回やると止められない。2回やってもまだ物足りない。もう馬から降りたくない。さっきまで喜んでいた子供が、泣いて馬からお父さんに引き下ろされていく…。
フィレンツェのピッティ宮殿、ボボリ庭園で育ったマリー・ド・メディシスは、夫アンリ4世が亡くなり摂政の地位を得た後、幼少期の思い出の宮殿をパリに造ることにした。1615年に始められた工事は16年かけて完成した。フランス革命の時には牢獄となり、ダントン、画家のダヴィッドなどが投獄された。1795年、ナポレオンにより上院が置かれた。第二次世界大戦のときは、ドイツ軍占領に抵抗した人々が銃殺されるなどの陰惨な歴史も持つ。と聞いても、足は自然とリュクサンブールへ向かう。