私はシャネル、あなたはグッチ? N° 432 1999-03-01 「ダックスフンドは胴が長くてお腹を冷やしやすい。だから冬場は服を着たほうがいい」と耳にした。馬は、汗を冷やすと風邪をひくから鞍を外した後で腹巻きをする、と聞いたことはある。それにしても今や、犬モードは花盛り。バーバリーの子犬用トレンチコートをはじめ、シャネル、グッチやエルメスなども犬のラインを展開。近ごろでは路上で一日に最低5匹くらいは服を着た犬に出くわす。こういう状況を目にすると「犬は喜び庭かけまわる、ネコはコタツで…」の歌を思い出して「犬には服なんて要らない」と決めつけがちだ。そんな簡単に判断していいものなのか。 袖付きの服はすべてオーダーメイド。 黒革にビョウ入りハードロック風などもある。 キルト風。 バカな質問だと承知のうえで「あなたの犬は寒がっていると思いますか?」とセーター着用の子犬と散歩中の女性に聞いてみた。「寒がってないかもしれないし、寒がってるかもしれない。一応着せてます」 犬モードの店「マリー・ポワリエ」へ行って聞く。「家の中で飼われている小型犬は23度位の室温に慣れているから、外に出たら寒いんです」 聞いてしまえば当然なことだ。ダックスフンドに関しては「足が短く、お腹が冷たい地面に近いから冷える」とのこと。冷える原因は胴長ではなく短足にあった。多くの服は、しっぽに小さな輪っかをひっかけて着用するようになっていて「用足しに不便では」という人もいるが、輪っかを外している犬も多い。 アニマル柄セーターを着たアニマル。 「マリー・ポワリエ」にはおしゃれな服やアクセサリー、ペット用シャンプー、香水(イタリア製)などが並ぶ。R・アルトマンの映画”プレタポルテ” の犬のファション・ショーは御主人マリーさんのコレクションだ。犬の服づくり20年。オーダーメイドのパジャマなども受け付ける。ラインストーンがキラキラ光る首輪や、M・ポワリエのロゴ入り絹のスカーフ、鋲入り黒の革ジャン風スーツなどは”toutou(ワンちゃん)好き”でなくても胸がキュンとする。春の新作は3月末に店頭に並ぶ予定だ。マリーさんはヨークシャー犬のヘア・スタイリストとしても有名で、店の一角は美容サロン(予約制)になっている。美容師さんはほかに2人。epilation (脱毛) を終えた犬が飼い主のお迎えを受けて帰ってゆく。ショービジネス界の顧客が多い。 「動物には毛皮が生まれつき備わっているから、寒いなんておかしい」というのは、犬とベッドで寝てみたり、馬を競走させて金を儲けてみたりという、人間の傲慢さを棚に上げての傲慢な物言い? 分からなくなってきた。 (美) Share on : Recommandé:おすすめ記事 マスク着用必須サイン/パリ、ボルドー、トロワなど 包んで、結んで、風呂敷ドレス。/ジュイ布美術館 Les Grands Voisins / パリ14区 サパンの捨てかた。 ただいま、ノエルの飾りつけ中! また、スカーフ論争。 Gare du Nord 〜 Place de la Nation