親の仕事の関係で、友だちとも離れ離れになってフランスに連れてこられてしまったいう経験を持つ子供は沢山いると思う。親は子供に良かれと選択したことであっても、日本で楽しく生活していたのに突然知らない国で言葉のハンディーに苦しまされたりと、自分の意思なんてまったく無視されたと思えて、それに対してどうしようもない悔しさを感じたりする。
去年の2月に画家の両親とフランスに来た小学校4年生の藤井啓君も、同じように急の環境の変化に戸惑った。言葉ができないためにフランス人ともなかなか打ち解けられず、一人で遊ぶことが多くなり、日本にいるころから得意だったヨーヨーをもくもくと練習する日々がしばらく続く。ある日学校でヨーヨーをやってみせたら、あまりの上手さに皆びっくり。校庭で大パフォーマンスが始まってしまった。その日以来、啓君は、無口な日本人の男の子からヨーヨーの達人として学校のヒーローになってしまう。仲良くなった友達のすすめで、毎週プランタン主催のヨーヨー教室にも通うようになった。
この記事が出るころには、両親といっしょに賞品に贈られたハワイ旅行に行っているはず。あっちで世界的に有名なチーム・ハイ・パフォーマンス、略して THPというヨーヨーのグループに会いに行く。「 THPに技をならってくるんだ。僕なんかよりずーっと上手いんだよ。」という啓君の表情はとてもいきいきとしていた。(章)