シャトレ広場から深夜バスに乗るたびに、隣の停留所から発車するランジス行きのバスが気になっていた。直通だから乗ってしまえば、黙っていてもあの大市場まで連れて行ってくれる。「買ったマグロを浴槽で解体、数家族がマグロ三昧の日々を過ごした」という友人たちの体験談も、羨ましく心に引っかかっていたので、新年早々行って見ることにした。
220ヘクタールは広い。ルーブル美術館のように何度も通うか、「これは見たい」という目安をつけて出かけるか…。猛スピードで走るトラック群には要注意だが、ブラブラ歩いて、20軒の銀行の明かりがネオン街のように並んでいるのを見たり、30軒もあるというカフェやレストランのハシゴをするのも楽しい。
卸売りやサービス業者など、大小1500の会社が集結、職安や国鉄、消防署など公務員だけでも400人以上、9000人近い人たちが毎夜元気いっぱい働く市場で魚、花、チーズに囲まれていると、空はあっという間に白んでくるのだった。
(美)
構成・文/益子実穂 協力/稲葉宏爾 写真/松井康一郎Remerciements a Messieurs Gonzalvez, Jessel et Stisi