La Marmite — 中央市場の喧噪から離れて一服。


 空っ風に紙屑が舞い、ときどき輸送トラックが轟音をたてて通りすぎるだけの、閑散とした昼間のランジス。シャッターの下りた巨大な倉庫の群と、だだっ広い道路。巨人の国の廃虚に迷い込んだみたいな不安な気分で歩いていたら、寒々とした道路の果てに、レストランの明かりが懐かしげに瞬いた。
 野菜市場の外れにある「La Marmite」は朝の4時から夜の7時までノンストップ営業で、市場で働く人々にご飯を食べさせてくれるブラッスリー&レストラン。青い上っ張りの男たちが群がって血のしたたるタルタルステーキなど食べている図を想像していたけれど、中に入ってみると拍子抜けするほどふつうの雰囲気で、窓の外に駐車したトラックの列が見えなければとてもランジスとは思えない。きちんとテーブルセッティングされたレストランの方では、スーツのおねえさんの給仕で、経営者風の恰幅のいい男女がゆったりと180フランの定食を食べている。
 私たちはブラッスリーで、安くてお得な67フランの定食。アンチョビークリームをのせたアボガドの前菜と干タラのブランダッド、大きなクレームキャラメルの3品は、パリだったらとてもこの値段では食べられそうもない。ポテトたっぷりの熱々のブランダッドが冷え切った身体を優しく暖めてくれる。相棒のとった肉詰めキャベツもおいしそうな匂い。
 忙しい市場の人相手だけあって、黒チョッキのギャルソンたちのサービスはキビキビとして早い。ふつうの店の3倍くらいある大きな長いカウンターは、早朝はきっと、力仕事の合間に一杯やる人たちで混み合うんだろうなー。


(由)

*4 av.de Bourgogne 94581 Rangis

01.4686.4661 日曜休み