登場人物に現実的な存在感。

『Chacun pour soi』 監督 : ブリュノ・ボンツォラキス

 映画に何を期待するか? アメリカのメジャー作品とか、フランス映画でもリュック・ベッソン系列 (例えば『タクシー』)のエンターテイメントを楽しみ、現実を忘れたレジャーな時を過ごすか、それともエリック・ロメール作品(『恋の秋 / Conte d’Automne』が公開中)の粋を味わうか、エミール・クストリッツァ作品(『黒猫くん、白猫くん / Chat Noir Chat Blanc』)のように政治的寓話を秘めながらも飛翔する醍醐味に酔うか、お馴染みケン・ローチの社会派悲喜劇(最新作『My name is Joe』)を観て免罪符とするか … みんな正解だ。 今回クローズアップするブリュノ・ボンツォラキスの『それぞれの道 /Chacun pour soi』を観た時、真摯な映画だなーということを一番に感じた。ケン・ローチの初期の作品のように、現実と四つに組んでいる監督の姿勢に好感を持った。応援したくなった。そういえば、同監督の前作『家族を憎む / Familles, je vous hais』もそうだった。彼の映画の登場人物たちは、みんな嘘偽りがない現実的な存在感をもっている。 ニコラとティエリーは、ガキの頃からの無二の親友。兵役が終わって社会に放り出された二人の将来は決してバラ色とは言いがたい。すぐにニコラには恋人ができ同棲生活が始まる。親友をとられたティエリーはとても動揺する。職なしのニコラは彼女に養われる形になるが、いつまでこの状態が許されるわけもない。ティエリーとニコラ、ニコラと彼女、あらゆるところでギクシャクし始める関係…人と人、人と社会、様々なベクトルが作用する中で、人も関係性も生き様も変わっていく。この当たり前といえば当たり前のことに、どこからどうアプローチするか、それがポイントなのである。

(吉)