日本では夏といえば、かき氷、生ビール、海、盆踊り、花火、怪談、高校野球など、さまざまなイメージが沸いてくるが、これら夏の風物詩は、俳句や詩歌になっても大衆歌にはなりにくい。 フランスの夏のイメージはやや季節感に欠けて、太陽やバカンス、トゥール・ド・フランスくらいしかないが、逆にフレンチ・ポップスやシャンソンには、夏をテーマにした歌が多い。映画「太陽がいっぱい」や「赤と青のブルース」「大混戦」などの主題歌曲のキーワードも夏や太陽、海だった。 いろいろなジャンルが混在した60~70年代の、ヒット・チャートがまだのどかな時代に流行ったこれらのヒット曲は、毎年、夏が来るとリバイバルする。 太陽がテーマの最も代表的な歌は、F・ドゲルトの “空と太陽と海” と J・ダッサンの “愛の挽歌” で一般的だが、ゲンスブールの “海・セックス・そして太陽” は限りなくデカダンスだ。 67年のテレビ用に制作されたミュージカル映画「アンナ」で、A・カリーナが創唱したゲンスブール作 “太陽の真下で” のCDが今、日本の若い “ゲンスバール” ファンの間でモテモテだとか。映画「今宵バルドーとともに」の挿入歌 “ミスター・サン” なども明るい恋の歌だが、同じ太陽でも、バルバラが歌うと絶望に満ちた “黒い太陽” となり、J・ギドニは、”Midi sans soleil” の中で呪われた太陽を歌う。世紀のいかさま師、ベルナール・タピは、青春時代に残した 3枚の超稀少EP盤のひとつに収録されている”Passeport pour le soleil”で、サルドーに似た暑苦しいボーカルを聞かせる。
そのほか夏の歌で主 なものには、ダミアの ” 瞳に太陽” やモンタンの “向日葵”、 トレネの ” ラ・メール”、アズナヴ ールの “八月のパリ”、 ヴォケールの “想い出の サントロペ”、アリディ の “恋の想い出”、フェ レの “L’annee 68” などが あるが、ピエール・ ペレ の “おちんちんの歌” と 並ぶ代表作 “楽しいバカ ンス村” が愉快な内容で 微笑ましい。 Les jolies colonies de vacances. Merci maman, merci papa, Tous les ans je voudrais qu’ca r’commence, You ka di a yi a da.でも、最後の擬声語が 「愉快だ、嫌だ」 と聞こえてなりません。
(南)
14日から16日は、ブルターニュの港町 Saint Malo でロックの「今」をさぐる音楽祭。無料のキャンプ場もあるというし海水浴もできる。14日は、甘い声で都会人の愛と孤独を歌うスウェーデン出身の J・J・ヨハンソン、イーノを思わせる凝縮された音楽と口ずさみたくなるようなメロディーで人気上昇中のサンハウスほか。15日は、ベスのボーカルがますます切なさを帯び、2枚目のアルバムも “All mine” など名曲ぞろいのポーティスヘッドが目当て。超満員のパリ公演を逸した人は、これだけでもサン・マロ往復の価値がある。16日は、パスカル・コムラードの新アルバムでも印象的なボーカルを聴かせてくれたし、秋には新譜が出るPJ ハーヴェイ やペリー・ブレークほか。
● Paris Quartier d’ete;≠W月中はパリの公園で、世界の音楽の無料コンサートを聴くことができる。オルケスタ・デ・プレクトロ・デ・コルドバは、スペインのアンダルシア地方のバロック音楽や民謡を得意とするギター中心の楽団。彼らの公演は、リュクサンブール庭園の音楽堂 (3日と4日/18h)、Parc de Choisy(6日/21h)。アフリカ、ブルンジ王国の太鼓のエネルギー!大地を轟かすような太鼓の連打の中で、それぞれ順番にソロをとってクライマックスに登りつめていく。ベルヴィル公園 (5日/20h)、リュクサンブール庭園の音楽堂 (6~8日/18h)、チュイルリー庭園のコンコルド広場寄り大泉水前 (9日/19h)。なおベルヴィル公園はとても見晴しがいいので夕涼みにも最高です。