「麻薬をやったことがあります」

 ヒッピーがマリファナを流行らせていた時期に制定された麻薬禁止法第630条(1970年)は「麻薬の使用とそれを他人に勧めること」を禁じている。フランスはこの法律を盾に、EUの中でも麻薬に一番厳しい国として知られ、ドラッグが表面化することに神経を尖らせている。例えば、サン・ローランの香水 “Opium”や、Tシャツにプリントされた大麻の葉っぱでも「L.630」に触れかねないのである。   
 昨年夏、合成覚醒剤エクスタシーが売買されていた疑いでシャンゼリゼのディスコ「クイーン」等、 5軒のディスコが6カ月の閉鎖処分を受けた。これに対する抗議デモ中(97/9/14)、 エイズ予防協会 Act-Up のマンジョ代表は <J’aime ecstasy> (ぼくはエクスタシーが好き)と書いたプラカードを掲げた。これは「”エクスタシー”への誘いであると同時に、麻薬への好意的表示」であるとして、2/25日パリ軽罪裁検事側はマンジョ被告に3万フランの罰金刑を求刑している。
 この裁判に対しマンジョ被告への連帯署名運動が起こり、映画界ではアンドレ・テシネ、マリナ・ヴラディ、ローマン・グピール、ゴダールら、さらにベルジェ・サン・ローラン総裁他アーティスト・文化人も立ち上がり、 2日間で350人が「私は麻薬をやったことを公にし、逮捕されるリスクを負います」という表明文に署名している。
 70年代初期に中絶の自由化を要求し、ドヌーヴを初め101名の有名人女性たちが「私は中絶を受けました」とマスコミで発表したのが思い出される。この1月ジョニー・アリディもル・モンド紙2面に渡ってのインタービューで、「時々コカインを使用することがある」と答え、タブー視されている麻薬問題に一石を投じている。
 1976年にも文化人 150人が “ジョワン18*”というアピールで大麻を処罰の対象から外すことを要求していた。ソフトドラッグの自由化を支持する人たちは、政府がドラッグに正面きって対処せず、”危険物”は見ざる聞かざるという欺瞞的姿勢であることを批判する。 
 最近、麻薬情報調査委と薬物依存症疫学研究所がパリ、ボルドー、マルセイユで行ったエクスタシー服用者の調査によると、この合成麻薬(1錠50F~150F)はまずテクノ音楽パーティー “rave”やディスコで流行り、最近は使用者の75%が友人宅のパーティーなどで初体験、 58%は1人で服用するようになっている。服用者は高校・大学・グランゼコールの学生から若年労働者まで広い層にわたる。エクスタシー服用者はすでになんらかの麻薬(LSD 49%、コカイン48%、ヘロイン37%)を経験している者がほとんどで、薬物併用による肉体的精神的弊害が懸念されている。因みに96年のエクスタシー押収量は35万錠。
 エクスタシーや大麻の使用が風俗化しつつある今日、ソフトドラッグとハードドラッグを区別しない麻薬禁止法L.630では、とても時代についていけそうもない。単に罰するだけでなく、麻薬についての正しい情報を広めようとする姿勢が必要なのでは。 (君)

*1940年6月18日ドゴール将軍のロンドンからのラジオによる抗戦の呼びかけ(Appel du 18 juin)をもじったアピール <Joint 18>。


 

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