多国間投資協定(AMI)

 先月16日、17日と続けて反対集会が行なわれた多国間投資協定(以下AMI:英語ではMAI)とは一体なんのことだろう。何故、映画監督、プロデューサー、俳優、芸術家等が、まるで68年5月革命時の市民集会の時のようにオデオン座に結集したのか。
 AMIの交渉は、2年前から経済協力開発機構(OECD)内で秘密裏に(この言葉を知る国会議員の少なさからも伺える) 進められてきた。この協定は端的にいって、国の主権に対して多国籍企業の利益を守るための権利憲章にほかならない。ある企業がある国に工場を造るとして、例えばその国の政府が、特定の化学物質を使うことを禁じたり、騒音や汚染規制を新たに設けようとすると、それはその企業に対する差別とみなされてしまい、国際裁判所に訴えられると敗訴してしまうシステムである。言い換えれば、弱肉強食の市場原理が君臨することになり、国や自治体、しいては市民一人一人の主権がまったく無視されてしまう。福祉、社会保障などという言葉は干からびたナスとなる。
 47年に生まれたGATT関税貿易一般協定は94年のマラケシュ会議で、世界貿易機関(WTO)にバトンタッチしたが、ここですでにヨーロッパ連合はすでに大幅な譲歩をしている。
 こうした危機をいち早く察知したのは、映画関係者をはじめとする文化人たちだ。彼らはすでに94年の交渉内容に異議を唱えて、文化的例外として投資保護規定からの除外を勝ち取った。しかし、例えばフランスは、自国の映画文化保護のために補助金を出してきたが、AMIが成立してしまうと、それさえも協定違反となり、罰せられてしまうことになる。タヴェルニエ、ベネックス、コスタ=ガブラスやジャンヌ・モローらが立ち上がったのも無理はない。すでに現時点で、映画市場が圧倒的にアメリカ産に支配されているのは周知のとおり。
 オデオン座の集会に集まったデンマーク、カナダ、スペインなどの映画人たちもAMIに関する情報がほとんど一般に流れていないことに怒りを表明していた。集会の冒頭にトロットマン文化相が挨拶したように、「AMIは敵だ!」はフランス政府の態度を表明したものであった。しかし、この投資協定が文化に限った問題でないのはいうまでもないだろう。
 2日目の17日、労働組合会館での集会は知識人、労働組合員、失業者、サン・パピエ(不法滞在者)や市民団体代表等、約500名を集め、「ル・モンド・ディプロマティック」紙常務のB・カッセンは「AMIはまるごと破棄すべきものである」と演説した。”市場経済がすべてだという唯一の思考”に対抗する「経済学者のアピール」を放った、若き経済学者の一人でベトナム系二世であるH・N・リエム氏は、「米国型の完全な自由交換・自由貿易は市場経済の専制にほかならない」と断言した。
 AMIは世界超資本主義の宣言ともいえ、このようなメカニズムが完成するなら、疑いなく、世界は資本に独裁されて歴史は終焉するにちがいない。
          (プチ・ポア)

 

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