パリの日本人シェフ30人をめぐる、愛情あふれるレストランガイド
ロール・アングランさん、フィリップ・ルーさん
近年、フランスでは日本人シェフの活躍が目覚ましい。そんな中、パリで能力を発揮する日本人シェフたち30人の料理とバックグラウンドについて取材した書籍が出版された。ロール・アングランさんとフィリップ・ルーさんが手掛けた、『30 chef.fes japonais.es à Paris(30人のパリの日本人シェフ)』(Editions MetsRacines刊)だ。
アングランさんは広告プロデューサー、フィリップさんは建築家としての顔を持つ。この書籍は、二人の純粋に「日本人シェフの料理が好きで、そのストーリーを伝えたい」という気持ちから企画された。
もともと、フィリップさんは大の日本好き。「職業柄、日本の近代建築に興味を持ち始め、そこから座禅や武術、書道、日本語、伝統的和食へと広がり、日本にも2回行きました。東京、京都はもちろん、四国では霊場めぐりもしましたよ」。一方、ロールさんは河瀨直美監督や黒沢清監督など、日本映画の大ファンだという。
「日本人シェフたちは、なぜ慣れ親しんだ日本を離れてフランスに来たのか、と疑問を持ったのが本を作ろうとしたきっかけです。言葉も文化も違うのに、何を求めて、自分から進んで苦労して、根無し草となってまで努力を重ねる。その理由を探ってみたかったのです」(フィリップさん)。
書籍では、30人のシェフの経歴と料理哲学が、美しい料理写真に合わせて綴られている。「よくあるレストランガイドは、レストランそのものについて語られることが多いけど、料理はシェフが作るものだし、それぞれの才能と彼らのストーリーを語る本が作りたかった。これは、シェフたちに対する私達の愛情が詰まったガイドブックなのです」(フィリップさん)。
本の企画が持ち上がったのは2020年の12月。しかし、ほどなくコロナ渦によりレストランは閉鎖に。取材したいシェフたちに電話をかけ、取材先を探した。「すべて自分たちで食べて、そして完全に支払うというポリシーで進めました。最初は理解してくれない人もいましたが、話をきちんとすると皆わかってくれ、中には試作と撮影に、2度も3度も快くつきあってくれる人もいて、ありがたかったです」(ロールさん)。登場するシェフは、伝統的なフランス料理から、モダンな料理、またフュージョン、日本料理、そしてパンやお菓子までと、バラエティに富んでいる。女性シェフが多いのも、特徴だ。
日本人シェフは、現在のフランスの料理界にすでに大きな影響を与えていると、二人は言う。「(日本人シェフは)よく学んでいて、テクニックが豊富。それに発想がとても自由で、クラシックなフランス料理に自国の食材を上手に合わせて素晴らしい皿を作り、それらは驚きに満ちています。フランスの料理人たちが最近、こぞって日本食材を使っているのは、日本人シェフの影響を外しては考えられません。また、盛り付けの美しさもずば抜けていて、私なんて皿が運ばれてきてから、3分間も見惚れるときもあるくらいです(笑)。これは、日本の風景や伝統美術、折り紙などから来ているものでしょう。これからも、日本人シェフは、ますますフランスにとって、なくてはならない存在になっていくと思います」(フィリップさん)。
『30 chef.fes japonais.es à Paris』
(Editions MetsRacines刊)39€
Librairie Junku、La Librairie Gourmand、Artazartなどで発売中
出版社ウェブサイトから通販も可能
https://www.metsracines.com