イダルゴ=パリ市長は7月9日、2025年夏からパリ市内のセーヌ川の3ヵ所で一般の人が遊泳できるようになると発表した。シラク元大統領が市長時代の1990年に「私は3年後にセーヌ川に泳ぎに行く」と川の浄化を約束して果たせなかった夢がついに実現するのだろうか?
発表された3ヵ所はサン=ルイ島の向かい(4区右岸)、国立図書館向かい(12区右岸)とイル・オ・シーニュ島(白鳥の島)の左岸側(15区)で、泳げる場所はブイで囲まれ、監視員がつくそうだ。
セーヌ川のパリ市内部分は来年夏のオリンピックで開催セレモニー(7月26日)およびマラソンスイミング、トライアスロン、パラトライアスロンの3種目が実施されるため、セーヌの浄化がとりわけ2016年から加速して進められていた。9日の市長会見時には、「水質は非常に良好」とパリ市の助役が請け合った。8月下旬には五輪のテスト・イベントでトライアスロン選手が実際にアレクサンドル3世橋付近でセーヌ川を泳ぐ予定だ。
かつては市民の遊泳場だったセーヌ
仏紙の報道によると、1900年のパリ五輪大会では、当時はまだプールがなかったためにパリ近郊(クールブヴォアとアニエールの間)のセーヌ川で水泳競技が行われ、1923年に禁止されるまではセーヌ川遊泳はパリ市民の人気の娯楽だったという。
川の水質は1980年代まではかなり悪化し、その後、浄水場の整備が進んだため90年代からは少しずつ改善に向かった。2015年にパリ市が五輪開催の立候補を表明したため翌16年から、セーヌ川にパリの東で合流するマルヌ川およびセーヌ川の浄化が総額14億€をかけて本格的に進められている。
ところが、まだ課題は多く、たとえばパリ東のヴァル・ド・マルヌ県では個人住宅の25%しか下水道につながっていない。これを国の補助金給付などで来年夏までに50%にする意向だ。同県とセーヌ・サンドニ県の下水の幹線管設置や浄水場の性能向上のための工事も実施中。さらに、オーステルリッツ駅付近では、雨水がそのままセーヌ川に大量に流れ込まないように、直径50m、深さ34mの雨水をためる巨大なコンクリート貯水槽を建設中だ。
大雨が降ると川の水質が良好になるのに2日かかるというので、セーヌ川でのオリンピック競技は天候次第という問題もある。セーヌでの市民の遊泳は、猛暑で気温50℃になる日がやってくる近い将来に備えるとイダルゴ市長は説明しているが、その頃には泳げる場所がさらに増えて、市民が遊泳を楽しめるようになるのだろうか?
今のセーヌ川を見るとまだ泳ぎたいとは思えないが、これほどの投資をしてまで川をきれいにしようという意気込みには脱帽せざるを得ない。(し)