「もうひとつの 世界は可能」
第3回・反核世界社会フォーラム
《反核世界社会フォーラム》がめざすもの。
国際的な大企業や政治の指導者が集まる「世界経済フォーラム」に対抗して、2001年にブラジルのポルト・アレグレで、市民の手による国際フォーラムが始まった。新自由主義のグローバリゼーションがもたらす貧富の差の拡大や環境破壊に異を唱え、「もうひとつの世界」の実現を民衆の立場から考える試みだ。市民団体が自主管理で運営するこの「世界社会フォーラム(WSF)」の創立メンバーのひとり、ブラジルの社会運動家シコ・ウィタカー氏は福島原発事故を見て、核兵器と原発のない世界をつくる必要性を確信した。在仏ジャーナリスト、コリン・コバヤシ氏や社会運動団体ATTACなどと連携して、反核がテーマのWSFを開催する企画を進め、福島5周年の2016年3月、東京で第1回を実現。同年8月には、モントリオールWSFの際に第2回が催された。
「孤立しがちな反原発運動を社会運動に結びつけ、核に関するさまざまな問題(被曝労働、原発事故後の健康被害、経済…)をグローバルな視点から考えることが必要。東京では被曝労働について初の国際シンポジウムを行い、注目された。今回、国際原子力ロビーの中核を担うフランスに、政府が原子力を推進するインドや日本を含め、世界15カ国から55もの市民団体が集まって交流する意味は大きい」とコリン氏。初日の全体会議で菅直人氏が語る予定だったが、衆議院選挙のためビデオ参加になった。福島第一の事故に首相として直面し、脱原発を決意した旨のメッセージをフランスから発信する。事故直後の官邸内部を描いた劇映画『太陽の蓋』も仏で初上映される。
チェルノブイリと福島の事故後、放射能による被害を小さく見せようと働く国際原子力ロビーの活動(「エートス」問題)について分科会を開くコリン氏は、「市民の知らないところで国際機関が動き、放射線防護の規準を甘くしようとしている」と危惧する。核兵器の脅威と核実験がもたらした被害、ウラン採掘から核廃棄物処理にいたる現在の核の危険と、後々の世代まで残る負の遺産…フォーラムでは盛りだくさんのテーマが30の分科会で討論される。3日間の交流をとおして、市民の側でどのように連帯し、核のない世界のために国際的に闘っていけるかを探る。