海に浮かぶ要塞フォール・ボワイヤール。
フランス西部の大西洋沖に浮かぶ要塞島フォール・ボワイヤール。過去80年にわたって放置された時代もあり、今でもどこか廃虚的な雰囲気を醸し出している。フランス人にとっては、1990年以降、毎年夏に放映される同名のテレビ番組の名としてもあまりに有名である。挑戦者が知力と体力を結集させ、お宝を目指しゲームに挑むアトラクション・バラエティ番組の舞台なのだ。映画好きにはアラン・ドロン主演、ロベール・アンリコ監督の青春映画『冒険者たち』(1967年)に登場する楕円形の要塞島と言えばピンとくるだろうか。ラストシーンでアラン・ドロンとリノ・ヴァンチュラが敵と銃撃戦を繰り広げた場所で、海上からの空撮も爽快だった。
残念ながら現在フォール・ボワイヤールは、一般人は上陸できない。だが、観光フェリーからは至近距離で見学ができる。今回はラ・ロシェルの港から出発。乗船すれば、中世の3つの塔や停泊するヨットを尻目に、船は沖へとまっすぐに進んでゆく。直線距離で約18キロ。米粒ほどの大きさの海上要塞は、少しずつくっきりとした輪郭を見せるだろう。
1時間もすれば到着だ。
この要塞島はナポレオンの命により、対イギリス防備のために建設された。しかし、19世紀半ばに、フランスはイギリスと同盟国になったことに加えて、長距離砲が登場したことで無用の長物となってしまった。その後は牢獄として使われたり、先述のように映画やテレビ番組の撮影場所となるなど、実に数奇な運命をたどってきた。青空のもと、静かに海に鎮座する灰色の軍艦のような外観は、どこか場違いで、ここだけ時が止まっているようにも見えた。
■ Fort Boyard行き観光フェリー
4月から11月まで毎日、フォール・ボワイヤールの見学フェリーが3便ほど運航。甲板から要塞を眺められる。往復2時間で大人20€/学生16€/4-17歳12.5€/4歳未満4€。
詳細はwww.inter-iles.com
■ 映画 『冒険者たち Les Aventuriers』
8月1日からロベール・アンリコ監督の60年代の作品5本が再上映される。4Kデジタル修復版を名画座Reflet-Médicisなどで鑑賞できる。この機会に大スクリーンで!
3つの塔について
大西洋岸にそびえる3つの塔は、中世の城塞の遺跡。伝説によると半蛇女の妖精メリュジーヌが塔の建築を助けた。サン・ニコラ塔は王室の宿で、シェンヌ塔は火薬庫があり、税の徴収も担当。一番背の高い白亜のランテルヌ塔は、大西洋岸で最も歴史ある灯台だ。3塔とも牢獄になった時期があり、囚人の落書きも残る。