2012年の大統領選の「第4の男」は、今年の大統領選支持率で「第3の男」になった。左派戦線党ジャン=リュック・メランションは、社会党アモン候補票、他候補票も奪いながら支持率を伸ばし、共和党のフィヨンを追い越した。
大得意の演説で集会はどこでも大盛況、ニューメディアを巧みに使いビデオゲーム “Fiscal Combat” やビデオクリップなど新手をどんどん出しながら若者の心もつかんだ。「市民大学」を定期的に開催し提案を説明する。自他共に認める「知識人」メランションの新著2冊はエッセー部門でベストテン内入りしたまま不動だ。メディアも「どこまで行く?メランション」(ル・パリジャン)、「メランションの時」(リベラシオン)などと人気上昇の〈現象〉を取り上げてきた。
12日のパリ・マッチ誌の政治家人気ランキング(支持率ではない)では、3月の同調査から+22ポイントと記録的に跳躍。68%で政界ナンバーワンの人気を揺るぎないものにした。
集中攻撃の的に
メランションが決選投票に残る可能性に気付いて〈脅威〉を感じ始めた右派メディアは「フランスの〝新たなリスク〟」(レ・ゼコー紙)、「フランス製チャベスの常軌を逸したプロジェクト」などと叩き始めた。フランスの経団連ガターズ会長は「フランスの危機」と批判し、今まで選挙についての発言を控えてきたオランド大統領も、週刊誌ル・ポワンで極右・国民戦線党のルペンと左派戦線党メランションの決選投票の可能性についてのリスクに名前をださずにほのめかした。
こんな突然の集中攻撃を「今まで何が起こっているかきちんと見てこなかった怠惰な者たちの、辛い寝起き」とメランションはブログに記している。
メランションの提案
NATOからの脱退、欧州条約改正のための他加盟国との交渉と、交渉決裂の場合の欧州からの脱退。大統領の権限を小さくし国民に権限を与える「第6共和政」への移行、国民が参加する憲法制定議会による新憲法。脱原子力ほかエコロジー政策への1千億ユーロの投資による経済活性化。税制改革による富の分配(一般社会拠出金CSGを累進性に。所得税の課税率を14に細分化し年収44000ユーロ以上の収入に100%課税。高課税による富裕層の国外流出対策でフランス国籍者であれば居住地にかかわらずフランスに納税、ほか)、定年60歳への引き下げと、週32時間労働制、国の医療費全額負担…。今、集中攻撃の的になっているのは、ウーゴ・シャベスとフィデル・カストロが2004年に設立した貿易・社会開発協力機構「米州ボリバル同盟ALBA」に加盟するという提案だ。
今日15日(土)14時から、メランションは「スタリーリングラード広場を占拠せよ!」の呼びかけで集会を開く。18日は、今回の大統領選で初登場して話題(批判も)になっている〈ホログラム集会〉。6都市の会場に、ホログラムを使って同時出演するという、エンターテイメント性の高い集会だ。(六)