新しいデモクラシーの提案
「投票したい候補がいない」「民意が政治に反映されず、政治家が好き勝手をしている」、などの不満をよく耳にする。どうしたらもっと民主主義を徹底できるのか。新しい試みや提案を探してみた。
「 市民による市民候補選出 」
2016年春、《Primaire citoyenne 市民による市民候補選出》がネット上で始まった。選挙人登録しているフランス人なら、30ユーロを払えば大統領選に立候補できるLaPrimaire.org。政策を練って出馬したのは215人。そこから同サイト上での投票で16人、次の投票で5人が選ばれ、最終的には10月、32000人が投票してブルターニュ地方のレンヌ市で市長補佐職に就く2児の母、シャルロット・マルシャンディーズさん(42歳)が選ばれた。政策の3本柱は憲法改正、ベーシック・インカム導入、エネルギーとエコロジー・経済改革の加速。議員の推薦状は500に満たず正式候補にはなれなかったが、一般人が135人の推薦を得たのは快挙。フランスで「市民政治の歴史が始まった」と言う彼女は、6月の国民議会選挙(6月11、18日)に挑むつもりだ。(美)
「 第6共和政 」
「Il faut abolir la monarchie présidentielle!大統領による専制君主制廃止!」。このスローガンとともに3月18日、メランション候補は〈第6共和政のための行進〉を行い、全国から13万人を動員した。1958年から現在にいたる第5共和政は大統領に権力が集中している、という批判をこめて、絶対王政打倒の象徴であるバスチーユ広場から「共和国」広場へと歩いたのだ。大統領に就任したら市民社会からの代表者も参加する〈憲法制定議会〉を招集し憲法を書きかえ、第6共和政を樹立すると公約に掲げる。公約を守らない大統領やモラル違反の政治家は国民投票などにより解任させることも可能にするという。第6共和政は社会党アモン候補や、昨年からレピュブリック広場に集まって社会の改革について話し合うNuit Deboutなどでも、多くの参加者が提案していることだ。(六)
「 「 白紙 」 という選択 」
本大統領選では「Parti du Vote Blanc 白紙投票党」なる団体が現れた。2010年にパリ近郊在住のステファン・ギヨ氏が設立した協会で、「党」と付いているが政党ではない。団体の訴えは「白紙投票は票としてカウントされず、どれだけの有権者が白紙投票したのかがわからない。今の政治への不満と抵抗として白紙投票するのに、その意向が伝わらない。だから、白紙投票者の意向がカウントされるよう、白紙投票候補者を出そう」というもの。候補者に政策はなく、白紙投票に意味をもたせるための立候補だ。 2014年の地方選挙では24人が出馬したが落選。この大統領選では同党会長のギヨ氏が出馬を表明。当選したら、白紙投票がカウントされるために憲法を改正するかどうかの国民投票を行い、その後辞任する、ということだったが推薦状が500集まらず、正式候補者になれなかった。「白紙投票党の立候補者に投票するのが現在の選挙システムにおけるオルタナティブ」と言うが、今後何を提案するのか。党に問い合わせたが、3月末現在、返事は来ていない。他候補も白紙投票をカウントすることを提案している。3月末の世論調査では有権者の4割が、白紙がカウントされるなら白紙投票する、と答えている。(羽)