2017・フランス留学論。
大学1年でトルコとアラスカを放浪。その後フランスそしてモロッコへ 「流学」。大卒後ふたたび渡仏し、現在2度目の留学中。フランス留学に苦悩し、迷走したからこそ心からわかる、そのつらさ、喜び、価値。「フランス留学で大きく人生を変えられた」筆者による、フランス留学論。
世界の国々のなかで、フランスを選ぶ意味。
「留学」というと、どこの国へ学びに行くことをイメージするだろうか。本紙を読まれている方ならば、多くがフランスを思い浮かべるかもしれない。しかし、それは一般的な傾向ではない。OECD(経済協力開発機構)やユネスコ教育部などの数字をもとに文部科学省が発表している統計によると、2014年に海外留学をした日本人は合計53,197人。そのうちアメリカへ飛び立ったのは19,064人(35.8%)と大きな割合を占めており、日本人の留学先として堂々の第1位だ。中国が15,057人(28%)で2位、台湾が5816人(10.9%)で3位、イギリスが3,089人で(5.8%)4位となる。肝心のフランスはというと、1,540人で全体のわずか2.8%しか占めておらず、全体の7位にとどまる。留学先としてフランスを選ぶ人は、マイノリティに属しているといえよう。
ただし、これは日本での話だ。世界に視点を向けると事情は異なってくる。同年、留学生を世界からもっとも多く受け入れた国はアメリカ(842,384人)、次にイギリス(428,724人)、オーストラリア(266,048人)と続き、次にフランス(235,123人)が4位として入り込んでくる。重要なのは、上位3国、つまり英語圏を除いたとき、フランスが留学生受け入れ数において、世界一を誇るという点だ。
「フランスは外国人留学生受け入れ第4位、英語圏以外の国では世界第1位」、キャンパス・フランス(仏政府留学局*右頁情報欄参照)は、このフレーズをしばしば掲げる。つまり、多くの国の中で、フランスという留学地を選ぶことは、世界的レベルで見れば、多数派的行為といえるのだ。
ここ10年間で変化した留学する人のプロフィール。
現在、フランスに留学するのはどのような人たちなのだろうか。留学相談のエージェンシー「アフィニティ・フランス」の留学カウンセラー、レホアンあゆみ氏は、ここ10年ほどでたしかな変化が観測されると語る。まず、第一に相談の件数が年々右肩上がりに増えているそうだ。現在、年間で400人、1日に1人以上の相談を受けている。その中でも、近頃は50代以上の留学希望者が増えている傾向があるという。また、これまではフランス語を学びに行く女性が圧倒的に多かったのに対して、最近では男性からの相談も増えたそうだ。料理の世界で、日本人シェフがフランス版ミシュラン・ガイドで星を取るなど、活躍している現状に影響を受け、(男性)料理人の渡仏が増加しているのでは、とレホアン氏は分析する。
料理人のフランス留学が活発になっていることからもわかるとおり、日本人のフランス留学が、より「専門」的になっている傾向もあるようだ。というのも、語学留学だけにとどまらず、ワイン・料理・メイクなどに関する専門留学をしたいという問い合わせが多くなってきたのだ。
フランス留学は、「文化」を学びに行くという側面が強い。フランス文化を現地で学びたいという欲求は、それなりにフランス文化が受け入れられている社会でないと発生しない。日本にフランス料理店が少なかった時代には、フランス料理そのものに触れる機会が少なく、本場を見てみたいと思う料理人も、今ほどは多くなかったはずだ。その意味で、専門留学を希望する人が増えたという事実は、日本社会におけるフランス文化の浸透を象徴している。今後、フランス文化に関わる日本人がさらに増え、彼らに触発され、留学する者も増加するのではないだろうか。
世界から留学生が集まり、大きな「文化交流」が生まれる。
すでに述べたように、フランスに学びに行くことは、世界的に見るとマジョリティに加わるという意味を含んでいる。これは、フランスに留学する者にとって、ただ単に何かを学ぶだけでない、貴重な副産物をもたらしてくれる。なぜなら、世界中から人々が同じ地に学びに来ているため、必然的に彼らとの繋がりが生まれるからだ。フランスに何かを学びに来ると、同じことを学びに来た世界中の人々と交流することになる。世界と繋がる―これは「フランス文化」という共通言語がもたらす、フランス留学の真骨頂ともいえよう。フランスで学んだ人々によりフランス文化は、世界各地で育まれ、フランスという土俵で私たちを繋ぐ。