上院は6月1日、インフルエンサー規制法案を満場一致で可決した。前日の国民議会でも満場一致で可決されており、同法案は最終的に成立した。インフルエンサーの活動を明確に定義・規制する法律は欧州では初めてで、世界でも希。
同法案はSNS上などでインフルエンサーの勧める詐欺的な商品・サービスの被害問題を受けて社会党議員が与党「再生党」系議員の協力を得て提出した法案で、消費者とくに若者を保護するのが目的。同法案にはインフルエンサーを「自身の知名度を利用してインターネットによって視聴者に商品・サービス等の直接・間接的販売促進を行って報酬を受ける個人や法人」などと定義づけている。
インフルエンサー代理店も規制の対象となり、インフルエンサーが代理店との合意のもとに行う活動は、一定金額以上の場合は契約書締結が義務づけられる。インフルエンサーは対価(報酬、商品の無償提供など)を得て推奨する商品・サービスが「広告」であることを、「#PR」「#AD」といったハッシュタグでなく、より目立つように表示しなければならない。さらに、コンテンツに加工フィルターを利用したり、画像・映像を処理している場合はその旨を明示することを義務づけられる。
また法案では、インフルエンサーが勧める商品・サービスのうち、特に若者に害があるとされる、美容整形、治療放棄奨励や、通常治療に代わる代替療法・商品、ニコチンを含む商品(電子タバコなど)は禁止される。スポーツの結果予想も禁止。ギャンブルは規制対象ではないが、18歳未満のアクセスが禁止されるサイトやプラットフォームに限定される。
こうした義務に違反すれば、罰則は最高で禁固2年と罰金30万€で、インフルエンサーとしての活動を一時停止または永久に禁止される可能性も。対象はフランス在住インフルエンサーだけでなく、外国で活動していても仏国内の人々を対象にするインフルエンサーも含まれる。そのようなEU域外のインフルエンサーはEU内に代理人を任命しなければならない。
いわゆる「インフルエンサー」は仏国内に約15万人いるとされる。インフルエンサー被害者支援団体は金融商品の詐欺について88件の告訴をしており、法案に金融商品を含めるよう求めていたが却下された。政府はこの法案を消費者保護ばかりでなく、インフルエンサーや代理店の法的定義や活動の枠組みを明確にして「責任あるインフルエンサー」を奨励するものだとしている。(し)