Q:初めてこのお店に伺った時、以前は15区にお店を持っていらしたとおっしゃっていましたよね?そのお話をまず聞かせてください。
松根:はい、15区の店は1999年の3月ぐらいからです。メトロVaugirardから小道を入ったところにあって、5年半続けました。最初はまだユーロじゃなくてフランだったんですが、ユーロに変わってからは10ユーロで前菜と主菜、または主菜とデザートにコーヒー付きというセットを出していました。もう18年前の話です。お客さんは昼間にしか来なくて、15区というのは意外と難しかったです。
Q:そうですね、結構落ち着いているかもしれない。
松根:そうなんですよ。5年やりましたけれども、1960年という中途半端な時代に建てられた建物の1階にあったので、とにかく物件が悪く、特に水回りが良くなくて、考えられるすべての問題をあの店で経験したというぐらいでした。だから5年も続けたし、売ろう、と。
Q:そこは一応営業権を買われたということですか?
松根:そうです。そこでどこかもう少し良いところを、田舎に行くかそれとも、と探していたらちょうど13区のCampo Formioというメトロの駅前の店舗が売りに出ているというのでそこへ。そしてそこでも5年ぐらい。あの界隈はその当時クスリの売買があるということで有名だったみたいで、そのことを全く知らずに入った私たちにまず警察からのチェックが入りました。
Q:13区の警察署はすぐ近くですよね。
松根:ええ、そういう界隈だということでうちの店も警察から要チェックのリストに入ったらしいのですが、うちの旦那はとにかくクスリが嫌いで、地下のトイレなどに入ってクスリをやられたら大変だ、ということでとにかく何をしでかすかわからないから夜に若者を入れたくない、という方針でした。なので結局夜はオヤジカフェになりました(笑)。夜はオヤジしか来ない。昼間はさすがに物価も上がったので、コーヒーなしで10ユーロというセットメニューを出しました。そのうち同じ建物の隣にあったインド雑貨の店が閉めるというので、だったらうちが買うよ、ということで拡張工事をして100席以上の店にしたんです。なので毎日100人とか120人ぐらいの人がお昼を食べに来ていました。
Q:すごい!
松根:ただやっぱりクスリなどの問題がある地区なので、もう少し中心へ移りたいと思っていた時にこの物件を売るかもしれないよ、というつぶやきを耳にして、ここを見に来ました。入った時に少し暗いな、とは思いましたが雰囲気がいいし場所もとてもいいので「ここしかないね」とうちの旦那とも話をして、売る、売らない、と二転三転しながら結局前の店も売れて、ここを2009年の11月に買うことになったんです。
Q:もともとフランスにいらした理由は?
松根:短大の友達がフランス好きでパリに行きたいというので、私はそれほど行きたいわけではなかったのですが安いツアーでたまたま遊びにきました。料理は好きなんですが、別にフランス料理をそれまでに食べたこともなかったし、ホテルの朝食のクロワッサンを3日続けて食べたら気持ち悪くなったほどです(笑)。それぐらいバターにも馴染みがなくて食べられるわけでもなかった。なのでそのあとはフルーツばかりを食べる日々を1週間ほど過ごしました。このように色々あったんですけれども、そのあと「じゃあフランス料理をやろうかな」と(笑)。
Q:それはどうして(笑)?いきなり端折りましたね。
松根:短大へ行ってからもう一度専門学校へ行きたいと思った時に料理か服飾かと迷ったんですが、辻にはフランス校があるというのを知って、学校の旅行でこちらに来た時に「もっと知りたい」と思ったんです。
Q:苦手を逆手にとって「知りたい」と。
松根:そうです。
L’Auberge Café
Adresse : 4 rue Bertin Poirée, 75001 ParisTEL : 01.4329.0122
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