暗闇にくっきりと浮かび上がる緑のオーロラ、幾つもの円形が幾何学模様をなすアゼルバイジャンの上空写真…。約200日間の国際宇宙ステーション(ISS)滞在中、宇宙から地球の姿を写真やビデオ、音楽クリップにしてSNSを通じて私たちに送り届け「宇宙大使」「アーティスト」とまで呼ばれたフランス人宇宙飛行士、トマ・ペスケさん(39)が、今月2日に地球へ帰還した。
ペスケさんは仏国立宇宙研究センター(CNES)などで働いた後、エールフランスのパイロット職を経て、2009年に約8400人もの中から欧州宇宙機関(ESA)の宇宙飛行士に選抜された。2016年11月中旬、彼と米・NASA、ロシアの宇宙飛行士、3人を乗せたソユーズMS-03宇宙船(49S)は、カザフスタンのバイコヌール宇宙基地から打ち上げられた。
ISS滞在中に誕生日を迎えマカロンを食べたり、「動かずにいること」が困難な宇宙で「マネキン・チャレンジ」をしたり、23万人の学生とのビデオ討論会で質問に答えたりと、ペスケさんは常に宇宙から親しみやすい話題を提供した。なかでも、子どもたちとの文学的な交流も彼を人気者たらしめた。『星の王子さま』目線で地球の物語を募集したところ、8,400人もの子どもや若者が応募。ペスケさんのお気に入りの作品は、「世界中の涙をため、悲しみと向き合う仕事をする住民に王子が出会う」(マエルさん・24歳)という想像力豊かな物語だ。
本来の目的は、宇宙での生物学的、科学的、医学的な実験だ。例えば、便のサンプルを採取し、人体のバクテリアの変化を研究したり、微生物や細胞研究に使用される施設を清掃したり、宇宙での筋力の変化を調べたりと、今回のミッションにおける数々の研究が、ESAの公式ブログに記載されている。
地球温暖化については「今までに宇宙で撮られた写真を見れば、氷山の解凍は明らか」「上空からは、都市部の大気汚染や、洋上にできたタンカーの油槽掃除による油の層が見える…地球温暖化は今すぐ取りかからなければならない問題。将来の問題ではないと実感した」と警鐘を鳴らした。
帰還後、歓迎ムードで開かれた6日の会見でも、トランプ米大統領がパリ協定脱退を表明したことについて「無責任」だと批判。ペスケさんがどのようなメッセージを発信していくのか、今後も目が離せない。(下)