第72回カンヌ映画祭だより⑤韓国映画史上初のパルムドール、ポン・ジュノ監督『Parasite/パラサイト』

ポン・ジュノ監督、受賞後の会見。

 

「審査員満場一致で」決定した最高賞。
 昨年の『万引き家族』に続き、アジア映画が二年連続で最高賞の快挙です。韓国の鬼才ポン・ジュノ監督の『Parasite/パラサイト』が、第72回カンヌ映画祭の最高賞パルムドールを受賞しました。審査委員長のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥは「審査員全員一致の決定」と明言。現地のジャーナリストの下馬評でも優勢でしたから、まさにカンヌにいた人々の気持ちがひとつになった気持ちの良いパルムドールです。

審査員長アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ

 壇上ではカトリーヌ・ドヌーヴに迎えられ、盾を受け取ったジュノ監督。「私はいつもフランス映画からインスパイアを受けてきました。アンリ=ジョルジュ・クルーゾーとクロード・シャブロルにお礼を言います」と、映画祭開催国の映画へ敬意を払う一幕もありました。

今回、韓国映画にとっては史上初となる歴史的なパルムドール。授賞式後の記者会見で、監督は「韓国映画は(製作開始から)今年で100年。カンヌ映画祭は素晴らしいプレゼントをくれました」と喜びを表現しました。本作はブラック・コメディにスリラーが混じり合う奇想天外な家族ドラマ。フランスでは早くも6月5日に劇場公開なので、ぜひお楽しみに。次号のオヴニー(6月1日発行号)でも作品紹介します。

 
 フランス若手監督の活躍
 さて、今回の受賞結果を見るとフランス映画の健闘が目立ちます。長編1作目でいきなりグランプリ(次点)に輝いたのが、セネガル系フランス人女性監督マティ・ディオップの『Atlantique/アトランティック』でした。

マティ・ディオップ監督。いきなりグランプリ。

 審査員賞にはマリ系フランス人のラジ・リの『Les Misérables/レ・ミゼラブル』。こちらも初長編(共同監督のドキュメンタリー『A Voix Haute』がありますが単独の監督作では初)で、いきなりのコンペ参戦組です。監督の言葉を借りれば、「20年前からすでにジレ・ジョーヌ状態だった」という荒れたパリ郊外のモンフェルメイユがドラマの舞台。映画祭期間中に最も話題になった一本で、マクロン大統領も近く鑑賞予定です。

ラジ・リ監督。


さらにセリーヌ・シアマが、私生活のパートナーでもあるアデル・エネルを主役のひとりに据えた『Portrait de la jeune fille en feu/炎の貴婦人の肖像』も脚本賞を受賞。本作はLGBTをテーマにした優れた作品に贈られる「クィア・パルム」も受賞済みです。このように重要な賞に、新しい世代を牽引する3人フランス人監督が次々と輝いたのは朗報でした。

セリーヌ・シアマ監督。


一方、ブラピとレオ様が出演したクエンティン・タランティーノの『Once Upon a Time in Hollywood/ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』を筆頭に、話題作も出揃ったアメリカ勢ですが、受賞作は一本もなし。アメリカの映画関係者は内心、面白くなかったかもしれません。
 
 期待外れた残念組 。
 ちなみに筆者の心のパルムドールは、パレスチナ人エリア・スレイマンのセルフポートレイト風な『It Must Be Heaven/天国に違いない』でした。ジャック・タチやオタール・イオセリアーニ作品を彷彿させる慎ましくも野心的な一本で、主人公は監督の分身と思しきノンシャランな映画監督。社会風刺も効いてます。
公式上映後の拍手は大変大きく、監督も受賞を確信したはず。ところが、蓋を開けたら「特別表彰 (mention spéciale)」という急に作られたオマケのような賞でした。授賞式では監督も言葉少なでいかにも不満そう。授賞式後の記者会見には、結局、記者の前に姿を見せずに帰ってしまいました。残念!

アントニオ・バンデラス、主演男優賞に。


 また、残念組といえば、作品の評価がトップクラスだったスペインの巨匠ペドロ・アルモドバル。もう20年もパルムドールの最有力候補と言われながら、今年も逃しました。とはいえ、アントニオ・バンデラスが主演男優賞を獲ったのがせめてもの救いです。

「(アルモドバルとは)40年前に出会い、8本の映画を一緒に作りました。彼を尊敬し、敬服し、愛してます。彼は私のメンター(指導者)。この賞は多くを与えてくれた彼に捧げます。俳優の仕事は苦しい時もありますが、今夜は私の栄光の夜です!」。バンデラスは壇上から、映画のタイトルは『Douleur
et Gloire/辛さと栄光』に引っかけ、監督に感謝を伝えました

これにて12日に渡る華やかな映画の祭典は終幕へ。今日からフランスの大きな話題は、欧州議会選挙へとバトンタッチです。(瑞)

【受賞結果】

パルムドール(最高賞):『Parasite/パラサイト』ポン・ジュノ

グランプリ(次点):『Atlantique/アトランティック』マティ・ディオップ

審査員賞 :『Les Miserables/レ・ミゼラブル』ラジ・リ

『Bacurau/バクラウ』クレベール・メンドーサ・フィリオ&ジュリアーノ・ドルネレス

監督賞 :『Le Jeune Ahmed/若いアーメッド』ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ兄弟

女優賞 :エミリー・ビーチャム『Little Joe/リトル・ジョー』

男優賞 :アントニオ・バンデラス『Douleur et Gloire/辛さと栄光』

脚本賞 :『Portrait de la jeune fille en feu/炎の貴婦人の肖像』セリーヌ・シアマ

特別表彰:『It Must Be Heaven/天国に違いない』エリア・スレイマン

 
 

 

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