ブザンソン:美術館を訪ねる旅。

地元の画家クールベの「鹿の最期」はフランシュ=コンテ地方の誇り。

Musée des beaux-arts et d’archéologie

フランス最古の美術館のひとつが、新装オープン。

1793年創立のルーヴルより100年も早い1694年に、地元のコレクターの収集品を一般公開したフランス最古の美術館のひとつ、ブザンソン美術・考古博物館。今年11月16日、3年の改修期間を経て新装オープンした。今では地方美術館のトップ5に数えられている。 現在の建物は地元の建築家、ピエール・マルノットがもともと小麦倉庫として建て、1842年に完成したもので、一度も小麦を入れることなく翌年美術館に転用された。コレクターからの寄付が増えたため、1967年〜70年の間に、ル・コルビュジエの弟子だったルイ・ミケルがコンクリートの壁を内装に導入し、展示方法を変えた。今回の改修は、展示と保存状態を改善するためで、ミケルの内装を尊重し、地元の建築家、アデルフォ・スカラネロが担当した。

ここはオープンスペースの美術館だ。歩いていて思わぬところで作品に出会ったり、時代の違う作品が同時に見えたりする。階と階をスロープで結ぶミケルの内装は、師のル・コルビジエが建てたパリ16区のラ・ロッシュ邸を思わせる。スロープの両脇の壁にある作品を見ながら登っていくと、ドアのない小さなスペースに出たりする。一応、年代別、ジャンル別になっているが、境界線は限りなく低い。

茨の冠と金の円筒は現代アート。新旧の作品が同時に見られる。

ブザンソンにはガロ・ロマン時代の遺跡が多い。1階の考古学部門は、先史時代からガロ・ロマンまでを網羅し、地元で発掘された旧石器時代のマンモスの歯や装身具、石器などを展示している。ミニマリスト的な内装で、小さなオブジェはショーケースに入った宝石のようだ。ガロ・ロマンの傑作は、紀元1世紀の銅の合金でできた牡牛(表紙写真)。写実的な造形だが、角が3本ある聖なる牛だ。

海の神ネプチューンの大きなモザイクはローマ帝国時代の地元の住居の床にあったもので、考古学コーナーで特に目を引く作品だ。海馬ではなく地上を走る馬に乗っているなど、当時の決まり事を無視した不思議な点が多い。1階にはルカス・クラーナハの作品が4点もある。クラーナハ(父)の「アダムとイヴ」は、かじりかけのリンゴを持つイヴと、「これを食べるのか」とリンゴを指さしてイヴに目で問うているようなアダムの一対だ。16世紀イタリアの画家、フェデリコ・バロッキの女性の顔のデッサンもこの美術館の傑作のひとつ。女性の表情に濃密な思いが感じられ、見る人の心を捉える。

地元で発掘されたガロ・ロマン時代のギョロ目のネプチューンのモザイク。

©️Musée des b.a. et d’archéologie de Besançon photo:GabrielleVieille

中世からルネサンスまでを網羅する1階。そこからスロープでのぼりながら見る17世紀の作品の中には、ジョルジュ・ドゥラ・トゥールとされる絵やルーベンスのものもある。

2階は18〜19世紀の展示室。中国の芸術品コレクターだったフランソワ・ブーシェが描いたロココ風の中国風景の数枚が目を引く。この階の目玉は、地元出身の画家、ギュスタ―ヴ・クールベの雪の中の狩猟風景「鹿の最期」だ。1866〜67年の冬をフランシュ=コンテで過ごしたクールベはこの大作を描き、満を持して67年の官展「ル・サロン」に出展した。片脚を失い、のけぞった鹿が狩猟犬に襲われているシーンで、それまでの人生で一番力を込めて描いた作品だという。
20世紀はボナール、マティスなどの近代絵画で終わっている。現代アートは思いがけないところにさりげなく置いてある。周囲に溶け込んでいるので、時代の違う作品との差に気づかないかもしれない。

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