月と星が、まだ暗い空で輝いている。朝6時のセーヌ河岸、アレクサンドル3世橋のたもとに平底船「ミラドール号」が到着した。船には、園芸連盟Val’horが大統領官邸・エリゼ宮に献上するサパン(モミの木)が積まれている。ブルゴーニュ地方で切られた樹齢25年のこの木は、 同地方のジョワニー港からヨンヌ川とセーヌ川、計183kmを5日間かけて航行してきた。
大型クレーンが、船のなかに横たわる高さ13メートル、重さ2トンのモミの木を持ち上げ、河岸で待ち構えていた長さ10メートルの荷車に載せると、警察官に連れられた爆発物探知犬がクンクンと木を嗅いでまわる。
ここからエリゼ宮まで、わずか800メートルほど。足ががっちり太い5頭の輓馬(ばんば)がサパンを載せた荷車を引き、その荷車を、赤い上着の御者が3人乗った馬車2台がエスコート。さらにその前をパトカーが先導する。一行は、蹄の音を響かせながらグランパレの前を通り、まだ人もまばらなシャンゼリゼを横切り、厳重な警備と中庭で待機していたプレスに見守られて、大統領官邸の門をくぐった。
サパンは、エリゼ宮の中庭に据えられ、12人の手によって2千メートルの電飾と4千個のオブジェで飾りつけられ、フランス一「セレブなサパン」となって、12月を彩る。(六)
2017年サパンの旅。
取材協力:VNF(voies navigables de France) – SFET(Société Française des equidés de travail) – Val’hor/AFSNN(Interprofession de l’horticulture, de la fleuristerie et du paysage/Association Française du Sapin de Noël Naturel).