秋も終わりに近づき、澄んだ空の下にアルプスの山並みが続くサヴォワ地方。今年最後の放牧を楽しむ牛、 馬、鶏が駆け回る小さな村ヴィラール・デリーでは、 そろそろ人間も冬支度です。
農家だった両親の土地を引き継ぎ、夫婦で自給自足の暮らしを実践して40年というロジェさん。その納屋の床には秋の初めに拾い集めたヘーゼルナッツ、クルミ、そして拾い終えたばかりの栗が、平らな木箱のなかにいっぱい入っています。
最初の一粒がポロリと枝から落ちた日から約3週間、土の上で痛んでしまわないよう、毎朝欠かさず手編みの柳カゴを両手に山の中へ。さらに、集まった大量の木の実の風味を長く保つため、毎日丁寧に並べて乾燥させてきました。
隣のカーヴの中にも、春に土を耕し、夏から秋に収穫した野菜と果物がぎっしり。ジャガイモ、カボチャ、ニンジン、洋ナシ、リンゴ…。仕込み終わったばかりのワイン、ブドウの搾りかすを利用した蒸留酒マール、食べきれないリンゴを絞ったジュースのボトルも。
「子どもの頃からの、あたりまえの習慣」とロジェさん。でも、一年間の小さな手仕事の集大成を眺めるその表情は、やはりどこか誇らしげでした。(裕)