『L’Homme qui tua Don Quichotte』完成しただけで奇跡!

アダム・ドライバー(左)とジョナサン・プライス。©Diego Lopez Calvin

 構想25年、撮影頓挫から18年。ついにテリー・ギリアム監督の『L’Homme qui tua Don Quichotte ドン・キホーテを殺した男』が完成し、最終日のカンヌ映画祭でお披露目された。

 ここに至るまではヒヤヒヤの連続だった。監督は映画祭直前に脳卒中で入院。加えてプロデューサーのパウロ・ブランコが訴訟を起こしており、司法判断で上映にGoサインが出たのが映画祭2日目のこと。とにかく落ち着かぬ状況をくぐり抜けての会見。しかし開始直後に監督が、「これは3週間の早撮りでお金もかからなかった」と冗談を飛ばしたりと、終始リラックスムードが漂った。

ギリアム監督(左)とアダム・ドライバー(右)カンヌでの記者会見。

 本作はかの有名な古典の映画化、ではない。主人公はスペインで撮影中のCM監督トビー(アダム・ドライバー)。才能はあるのに情熱を失った男だ。彼は学生時代に自分が撮ったドン・キホーテについての映画を偶然鑑賞し、過去の役者とも再会を果たす。それは過去と現在が交錯する奇想天外な冒険の始まり。自分をドン・キホーテと思い込むイカれた男は、『未来世紀ブラジル』の名優ジョナサン・プライスが扮する。監督は「撮影は大変だったが、俳優みなが自分の命を救ってくれた」と感謝を述べた。一方、宿敵ブランコについて聞かれた監督は、「彼は現実世界において強烈にある種の役を演じてくれた。有難う」とコメント。本気で“ドン・キホーテの映画を殺そうとした男”に、爽やかに礼を言ってのけた。

 これで傑作だったら「終わりよければ全てよし」。だが、鬼才が四半世紀を費やした作品は、愛や冒険、アクションやユーモアと映画の要素は詰め込まれているが、肝心のポエジーだけがない。それゆえ痛々しいから騒ぎに見えたのは残念。しかし完成しただけでも奇跡の作品ゆえ、目撃しないのはもったいないだろう。現在公開中。(瑞)