八百屋の店先に、新ニンジン、新玉ネギ、アスパラガス、新ジャガイモなどが勢ぞろいしていて、菜食主義者でなくとも、こんな野菜たちをとことん調理して、春、初夏ならではの味を楽しみたくなる。白と薄い赤紫色の皮が美しい小さな新カブも忘れてはいけない。どこまでもシンプルに皮をつけたまま薄く切ってサラダに入れてもおいしいし、グラッセにしてもいいし(コラム参照)、丸ごとを、新ニンジンや新ジャガイモといっしょに、鶏のもも肉と煮込んだ一品も評判がいい。
どこのスーパーでも簡単に手に入る鶏のもも肉を人数分買ってくる。そのままでもいいのだが、いためるときに扱いやすいように、そして火が通りやすいように、関節のところで二つに切り分けたほうがいいだろう。カブは、煮汁のうまみがよくしみ入るように皮をむき、丸ごとか、大きいものは二つに切り分ける。ニンジンは皮をむいて1.5センチほどの厚さに輪切りにする。ジャガイモは皮をむいて、小さいものはそのまま、大きめだったら二つか三つに切り分ける。いつものごとくブーケ・ガルニも用意する。
ココット鍋やソトゥーズにオリーブ油を多めにとって中強火にかけ、熱くなったら鶏肉を加える。途中でひっくり返して、両面にきれいな焼き色をつけたい。白ワインを加え、木のへらを使って鍋の底についている肉のうまみを溶け込ませたら、ひたひたになるように水あるいはチキンのブイヨンを加え、濃縮トマト、押しつぶしたニンニク、ブーケ・ガルニを入れ、塩、コショウする。沸騰してきたら弱火にし、ふたをして15分ほど火を通したら、ニンジン、カブ、ジャガイモを加え、もう30分ほど煮込んでいく。仕上げに、beurre manié(コラム参照)を加え、丁寧に混ぜ合わせればでき上がり。ブーケ・ガルニをとり出し、みじんにきざんだパセリをたっぷりと散らす。
口の中でとろけるようなカブの上品な味わいは、新カブならではだ。バゲットパンひと切れに煮汁を吸わせるようにしながら、そのおいしさを味わい尽したい。(真)
4人分: 鶏のもも肉4本、カブ600~800g、ニンジン3、4本、ジャガイモ600g、ニンニク1片、濃縮トマト大さじ1,2杯、ブーケ・ガルニ、beurre manié(バター大さじ2杯+小麦粉
大さじ2杯)、パセリ適量、オリーブ油、塩、コショウ
Navets glacés
新カブが出回るころにぜひ作りたい一品です。付け合わせ用なら4人分として600グラム用意する。皮をむいたら、いくつかに切り分ける。カブが重ならないように入る大きさの鍋にバターを大さじ1杯とって、中火でカブをいためていき、軽く色がついてきたら水をひたひたに入れ、軽く塩、コショウ。沸騰してきたら弱火にし、ふたをして30分ほど火を通す。ふたをとり、バターを大さじ1杯と砂糖を二つまみ加え、中火に戻し、煮詰まってきた煮汁をカブにかけまわすようにしながら火を通していき、煮汁がほとんどなくなって、カブにてりが出てきたらでき上がりだ。みじんに切ったパセリやシブレットを振りかける。適当に切り分けたニンジンと半々にしてもいい。塩ゆでにしたサヤインゲンといっしょに、豚肉や子牛肉のソテーの付け合わせにしたら文句なしだ。
Beurre manié
煮込み料理の仕上がりにとろみがほしいなあと思ったときに便利です。バターを煮汁の量次第で、大さじ1杯から3杯をボウルにとって室温に置いておき、ポマード状になるまで柔らかくする。ここへ同量の小麦粉を入れ、フォークを使って均一になるまで丁寧に練り合わせ、煮汁に加える。こうするとダマができない上に、バター風味も加わって、一石二鳥。
Cuisse de poulet
少人数だとチキン1羽はもてあます。そんなときには、もも肉を1本とか2本買ってくればいい。そのまま、オーブン皿に並べ、バターをのせて塩、コショウし、水を半カップほど加えて、オーブンでローストにすることもできる。そのまま好みの味つけでソテーしてもいいし、骨をはずして切り分ければ、中華風いためものに大活躍。今回の「ふつ・わ」の鶏肉のそぼろも、もも肉をひいたものが材料です。