米プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスティーン氏のセクハラ事件をめぐる動きがフランスにも波及し、議論が沸騰している。
発端は10月5日に米紙が、映画会社ワインスティーン・カンパニー(TWC)創業者で多数の名作を世に送り出したワインスティーン氏が30年以上にわたって女優や社員にセクハラを働いていたことを証言入りで詳細に暴露したこと。他紙ではレイプ疑惑も報道され、8日にはTWC役員会が同氏を解任、14日には米映画芸術科学アカデミーが除名。フランスもレジオンドヌール勲章剥奪手続きを取るなど、波紋が広がった。
この動きに輪をかけたのが、米女優がツイッターで、セクハラ被害に遭った女性に呼びかけた「#Me Too」だ。フランスでは13日に、サンドラ・ミュレール記者が「#balancetonporc(豚野郎を告発せよ)」でセクハラ体験を暴露するよう呼びかけ、18日までに33万5300件のメッセージが飛び交った。自身の体験をぶちまけて相手を誹謗するやり方には批判もあるが、裏を返せば、それだけの女性が公にできない被害に苦しんでいるということでもある。2014年の調査によると、女性の5人に1人が職場でセクハラに遭っている。告訴はわずか5%で、年間約1000件の告訴に有罪は60件程度だ。
この過熱状態を受けて、マルレーヌ・シアッパ男女平等担当相は16日、性差別的暴力・性的暴行防止法案を来年前半に国会に提出すると明らかにした。法案には、11歳の少女と性交渉を持った28歳の男性が、少女が抵抗しなかったという理由で強姦罪として起訴されなかった件を受けて、一定の年齢以下では性交渉の合意が成立しないことが盛り込まれる。15歳未満の未成年への性的暴行事件の時効延長、公道におけるセクハラを違法とする案も検討している。時効問題については、2016年のドニ・ボーパン元国民議会副議長のセクハラ問題で、3年の時効のために今年春に不起訴が決まった影響から、2月の法改正でセクハラの時効は3年から6年になった。
法整備はもちろん大切だが、男女平等先進国であるフランスでセクハラがまかり通っている現実は驚くべきことだ。92年に違法行為となったセクハラへの認識がまだ成熟していないのか。男性被害者も含め、被害者が堂々と声を上げられるような社会の認識が改善されるのにはまだ時間がかかるのだろう。(し)