ベルヴィル大通りのマグレブ菓子屋さんや食料品店に、せり出すようにナツメヤシの実(デーツ)が並ぶと、ラマダンがきたな、と感じる。即席の陳列台も登場し、生産地も粒の大きさも様々な、茶色い実の品定めに通行人が次々と足をとめる。イスラム教徒が日の出から日没まで断食をする神聖な月、 ラマダン。夜になって人々がまず口にするのがこのデーツだ。
パリ・グラン・モスケ(モスク)は、今年のラマダン開始を4月13日と発表した。イスラム暦による1年の、9ヵ月目の新月(三日月)が観測された翌日から始まる。毎年10日間ほどずれ、33年かけて一周するため、春の年も冬の年もあるそうだ。例年ならこの時期のベルヴィル地区のティーサロンやレストラン、パティスリーは深夜まで営業している。日中の断食を終えた人たちがモスクへ行ったり、夜食やお菓子を食べたりそぞろ歩く姿がみられ、清々しくも心踊る気分に満ちている。店にとっても書き入れ時だ。ラマダン月の夜食は大切で、家庭の食費が3割増えるほどなのだ。今年は昨年に続いて外出規制があるから、パティスリーもティーサロンも外では楽しめない。ナツメヤシの大箱を買って帰宅し、まだ明るい空をにらみながら味わった。(集)