Q:お昼前菜でいただいたゆず入りのタラマ(タラコのペースト)も作られたんですか?
西畑:いや、あれは本店が仕入れているものです。
Q:Yuzu柚子というのはシェフが日本人だから?
西畑:関係ないと思います。
Q:正直言って、少ししょっぱかったです。
西畑:でしょう、あれはパンと一緒じゃなければ塩辛くて味が濃いですよね。だから僕はもう少しマイルドになるように、とオリーヴオイルを皿の周りにかけて塩味を伸ばしています。
Q:確かにあのオリーヴオイルは優しかったです。日本の食材は使っていらっしゃいますか?
西畑:結構使います。柚子がある時には、僕は日本から柚子を持ってきますから。醤油も使いますし、これからはゴマとか使っていこうかなと思っています。
Q:ゴマは美味しいですよね。
西畑:そうですね、ゴマは美味いです。
Q:結構私はゴマを何にでもかけています。
西畑:ゴマは美味い、だからごま油も結構使っています。あとは、手に入って美味しければ何でも使います。柚子胡椒でも、こちらで手に入るなら使いたいと思っています。でも、僕が嫌いなのはわさびなんです。批判になってしまうかもしれないですけれど、わさびを温めるのが嫌いなんです。温めてソースに入れるシェフがいるじゃないですか?僕にとっては無理ですね。わさびは温めてはダメだと思っていますから。
Q:わさびを温めることには私も賛成しません。ところでお味噌はどうですか?
西畑:微妙ですね。味噌はどうしても、どう食べても「和」の香りがしてしまいますでしょう。「和」すぎるのはどうかな?と思います。
Q:それはお醤油も同じじゃないですか?
西畑:醤油は僕にとっては塩と同じ感覚ですけれど、味噌は入れることによってすぐに「和食」になってしまう。だからこそ星付きのレストランで味噌を使っている料理を出されるとがっかりしてしまいます。なぜここまでのレストランに来て、味噌を使った料理、茄子と一緒とか、に出会うのか、と思う。
Q:茄子の田楽?みたいな。
西畑:えー!って思うじゃないですか。だから味噌は使うか使わないかという瀬戸際にある微妙な食材ですね。
Q:フランスの有名シェフが日本の食材を斬新に使う傾向はありますよね。日本人シェフがあまりにもあからさまで恥ずかしいと思うことを、先入観がないだけ自然にしてしまう。
西畑:我々は手を出せないですけれど、グラン・シェフは使います。上手く使っているな、とは思いますけれど、我々の発想にはない使い方ですよね。ただ上手く使っているからどうか?と問われると、自分はこういう料理には使わない、と答えますね。
Q:これまでにお会いしたシェフの一人が「お醤油は危険、美味しくしすぎてしまうから」とおっしゃっていました。
西畑:そうなんですよ、醤油は危険なんです。実は肉に一番合うのは醤油なんです。うちの親父が言っているのはカレーパウダーも何でも美味しくしてしまうから、カレーも使うな、と。
Q:カレーね、私はよくクミンを使います。
西畑:僕も使います。前にCurry d’agneau子羊のカレーを出した時には使うべきかどうか迷いました。
Q:クミンじゃなくて、もっと危険なのはRaz-el-Hanoutというモロッコのスパイスで、あれも入れればすぐに心はモロッコへ。
西畑:あれも確かに危険ですよね。そういうことなので、手が出せないんです 。だから味噌も怖いんです。和食は和食のプロに任せようということですよね。
Q:そりゃそうですよね。
西畑:フランスではそういう分野というんですか、しっかり分担されているじゃないですか。肉屋の仕事はここまで、魚屋もここまで、という風に。でも日本では全部やらなきゃならなかったりします。パンだってパン屋に任せればいいけれど、日本ではレストランでパンを焼きますからね。まあこちらではガストロノミーの店は焼いていますけれど、やっぱりパン屋のパンが一番美味いと思います。
Q:餅は餅屋ということですね。
西畑:僕はそういう考え方ですね。もちろん自分が作った方が絶対美味いと思うものは自分で作りますけれど、買って同じレベルだったら買った方がいいというのが僕の考え方です。
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