ルモンド紙1月20日付は「価格、原発、資金―EDFの失意」という見出しで仏電力会社(EDF)の山積する問題について報じた。政府の低価格要請、原発停止、欧州加圧水型炉(EPR)建設の遅れなどだ。
EDFの大株主(84%)である政府は13日、今年の規制電気料金の値上げを4%に抑える方針を再確認し、規制料金を適用する他の電力会社に販売する低価格電力(原子力発電)を20テラワット時(TWh)増やすようEDFに要請した。昨年からの燃料価格高騰を受けて、政府は低所得世帯へのエネルギー小切手、インフラ手当、電気への減税、価格抑制のために今年度計200億ユーロの支出を予定しており、EDFにも貢献を求めたのだ。低価格電力は通常の市場価格の6分の1で42€/メガワット時(MWh)。EDFは低価格電力の割合が全電力生産の4割に達し約80億ユーロの収入減になる上、その措置はエンジーら競合会社に有利になるだけだとして、経営陣も労組も猛反発。4労組は26日にストを決行(参加率37%)。
この猛烈な反発の背景には、EDFが13日に明らかにした原子炉5基の運転一時停止もある。出力1450MW規模で比較的新しい3基が12月に、今年に入ってさらに2基の計5基に冷却水のステンレス鋼配管に腐食や腐食割れが発見されたため、より精密な検査のために一時停止された。この腐食割れを定期点検時に発見した原子力安全庁は、漏れや原子炉格納容器にひびはないが、「想定外の深刻な出来事」としており、他の原子炉にも同様の問題がないか調査中だ。この停止でEDFは今年の原発電力量予測を330〜360 TWhから300〜330 TWhに下方修正。メンテのための一時停止と合わせると原子炉の3割が停止しており、消費の増える冬に電力不足が懸念されるが、政府は電力供給に問題はないとしている。電力価格の高騰で操業を縮小した企業もあるほどで、供給不足と価格高騰の不安はぬぐえない。
さらに追い打ちをかけるのが、フラマンヴィルのEPR建設の新たな遅れだ。EDFは12日に核燃料装填は22年末の予定から23年春にずれると発表。建設費も124億から127億ユーロに修正され、07年当初の33億ユーロからするとほぼ4倍に膨張している。21年上半期で410億ユーロの金融負債を抱えるEDFに追加投資はきつい。金融界では増資もささやかれているが、ルメール経済相が19日、「国は決してEDFと社員を見放さない」と宣言していることからして、EDFが非常に厳しい状況にあることだけは確かだ。(し)