南仏グラースの公立高校で3月16日、この学校の1年生で16歳の男子生徒が銃を乱射し、生徒と校長計5人が軽傷を負った。アメリカの高校での銃乱射事件などに影響され、他の生徒に対する怨恨から犯行を企てたとみられている。フランスの学校での生徒による銃乱射事件は初めて。防止策がほとんど取られていない現状に、不安が広がっている。
事件は、香水の産地で知られるグラースのトクヴィル高校で昼頃発生。地元検察によると、男子生徒は猟銃1丁、小銃2丁、練習用の手りゅう弾1個、爆発物を持って校内に現れた。標的にしていた生徒たちを探して食堂に向かい、生徒たちに向かって発砲。現場に居合わせ、止めに入った校長にも発砲した。警察が到着すると反抗せず投降した。
発砲した生徒は警察の調べに対し、一部の生徒たちとの「悪い人間関係を終わりにしたかった」と話し、10人前後の特定の生徒を殺すつもりだったと供述。精神鑑定の結果、精神疾患はなく、殺人未遂容疑で起訴された。
男子生徒は犯罪歴がなく、宗教・政治的に過激化していた形跡はない。しかし武器や暴力的なビデオゲームに関心が高く、ソーシャルネットワークに、アメリカのコロラド州コロンバイン高校で1999年に起こった乱射事件などの写真や動画を投稿していた。友人の17歳の青年も、共犯容疑で起訴された。この青年は、アメリカの高校で3件の殺人事件を起こした犯人に手紙を書き、両親が当局に相談していたという。
発砲した青年は事件当日、武器をカバンに隠し、柵を乗り越えて校内に入ったと話している。所持していた武器は、家族が所持していたという情報もある。父親はグラース市の市議会議員で、国民戦線が出馬母体。
フランスでは、2012年にユダヤ人学校でイスラム過激派による銃乱射事件があったが、当該の学校に通学している生徒による銃乱射事件は初めて。事件翌日のル・パリジャン紙は「高校で恐怖」と衝撃を伝えた。
相次ぐテロを受け、高校までの教育機関では職員による入口の監視が義務づけられている。カバンの中身のチェックも勧告されているが、短時間に数百人以上の生徒が到着するため、実施している学校は少ないようだ。金属探知ゲートの設置も議論されているが、財政上の理由から実現していない。今回の事件を受け、生徒や父兄に不安が広がっているが、高まった懸念が具体的な対策の実施に繋がるかは未知数だ。(重)