4月24日に投開票された大統領選挙の決選投票で、共和国前進党(LREM)のマクロン現職大統領が58.54%の得票で、国民連合(RN)のマリーン・ルペン候補(41.46%)を破って再選された。5月13日までに、2期目の就任式が行われる。
マクロン候補は2017年の66%より後退し、ルペン候補は伝統的に支持率の高い北・東・南部に加え、南西部、中央部でも得票率を上げた。ルペンがマクロンを押さえた県の数は17年の2県から30県に増えた。また、コロナワクチンの一部義務化などで現政権への反発が大きいためか、第1回投票ではメランションがトップだった4海外県でルペンがトップに。両候補に反発する有権者のため、棄権率は28%と大統領選としては1969年以来の高率だ。白紙(4.6%)、無効票(1.6%)を合わせると34.2%に上り、選挙人登録者総数に対するマクロンの得票率は38.5%。現政権への不満が顕著に表れた。
マクロン氏は当選直後のスピーチで、自分への支持ではなく極右ルペン阻止のために投票した人が多数だったことを認め、棄権者の無言の声にも耳を傾け、次の5年間は政治のやり方を変えると発言した。
ルペン氏は得票率上昇を「勝利」と受け止め、総選挙(国民議会選挙)に向けた戦いを宣言。早くもゼムール支持者は右派の最右翼の結集を呼びかけているが、RN幹部は共闘を拒否した。第1回投票で22%の「服従しないフランス」党(LFI)のメランション氏は「第3回投票が始まる」「私を首相に」と環境保護派も含めた左派「大衆連合」で総選挙での結集を呼びかけた。共産党は前向きな姿勢だが、社会党のイダルゴ氏、環境保護派のジャド氏との交渉はこれから。17年の総選挙で280議席から30議席に落ち込み、大統領選でも1.75%の得票率に低迷した社会党は、前回総選挙で17議席に躍進し今回の大統領選でさらに勢いをつけたLFIに完全に取って代わられた感がある。右派の共和党は党としてはLREMとも極右とも一線を画す姿勢だが、分裂は進みそうだ。6月12、19日の総選挙でマクロン不満票がどう動くか、予断を許さない。
マクロン氏は年金引き上げ、最低収入保障などの購買力向上政策、議論のある年金制度改革などを優先課題として挙げており、大統領選で表面化した庶民の不満に対処していかざるを得ない。現在は国民議会で過半数を維持しているが、今度の総選挙では楽観視はできない。伝統的な右派と左派の力が大統領選でさらに弱体化した結果、状況は混沌としている。(し)