不毛どころか、驚くべき生命が宿る砂漠。


「砂漠」というと暑い地方と思いがちだが、さまざまだ。北極南極とその周辺の「寒い砂漠」、非常に暑い地方にある「暑い砂漠」、それに加えてゴビ砂漠のような「大陸内にある砂漠」や、チリにあるような湾岸の砂漠もある。日本語では「砂漠」というが、必ずしも砂があるわけではない。共通するのは地上に液状の水がほとんどなく、年間降雨量が200mm以下と極端に少ない乾燥した地帯であることだ。砂漠は地球の表面積の3分の1を占めている。昼と夜の寒暖の差が激しく、食物が少ない過酷な条件のもとで、動植物と人間はどのように生きているのか。自然歴史博物館の所蔵品から200点の剥製や植物鉱物の標本、生活道具を展示し、マルチメディアを使って楽しく砂漠の知識が得られる展覧会だ。
一番ワクワクするのは動物のコーナーだ。全身を覆う棘で朝露から貴重な水分を摂取するトカゲ、足に生えている毛で大地の振動を感知し獲物を捉えるサソリ、カンガルーのように後ろ足で飛ぶトビネズミ、砂をまとったような体で可愛らしい声で鳴く正体不明の動物など、映像も剥製も見ていて飽きない。どの動物も、厳しい環境に順応するすべを身につけている。

また一見、何もないかに見える砂漠には金銀銅、貴石などの鉱物が埋もれている。本展キュレーターの1人で、エジプト古代文明とエジプトの砂漠地域の関連を研究する地理学・考古学者のマエル・クレピーさんは、「砂漠の表面には植物が少ないので、砂や岩が地表に現れ、その砂や岩の色から、下にどんな鉱物が埋まっているかがわかります。それだけに、砂漠では採掘もしやすい」と言う。
「古代エジプト文明で使われた金は、エジプト、スーダンなどで採れたものでした。エジプト人は紀元前2500年にはすでに金を採掘していました」と説明してくれた。現代の採掘作業にはダイナマイトやブルドーザーが使われ、それによって貴重な考古学的遺跡も、やはり貴重な生物の多様性も危機にさらされている。

砂漠を脅かすのはそれだけではない。気候変動で、暑い地方はさらに気温が上がり、北極南極では氷が溶けて、その地に順応していた生物が適応できなくなりつつある。砂漠なんて自分には関係がないと思う人にも、砂漠を襲う危機を伝えることで、世界は繋がっていることを感じさせてくれる展覧会である。(羽)
11/30まで。

▶ Museum National d’Histoire Naturelle Grande Galerie de l’Évolution
(国立自然史博物館 大進化ギャラリー)
36 rue Geoffroy Saint-Hilaire 5e
M°Place Monge
www.jardindesplantesdeparis.fr/fr/expo-deserts
火休10h-18h 16€/13€ 予約がベター。


国立自然史博物館 大進化ギャラリー
Adresse : 36 rue Geoffroy Saint-Hilaire, 75005 Parisアクセス : M°Place Monge
URL : https:// www.jardindesplantesdeparis.fr/fr/expo-deserts
火休10h-18h 16€/13€ 予約がベター。
