女性の進化と男性の”オブジェ化”
映画とモードの関係をひも解く展覧会が、パリ・シネマテークで開催中だ。その名も 「ジャン=ポール・ゴルチエによるCinémode」。ゴルチエ本人がキューレーターを務める。2020年春夏オートクチュールを最後にデザイナー業を引退していた彼だが、表現者人生はまだまだ終わらない。
入口に飾られるのはトニー・マーシャル監督の写真。ゴルチエの親友だった彼女は、セザール賞作品賞を獲得した『エステサロン ヴィーナス・ビューティ』(1999)で知られる監督で、彼女の母親は往年の大女優ミシュリーヌ・プレールだ。ゴルチエは13歳の時にプレール出演のジャック・ベッケル監督『Falbalas 偽れる装い』(1945)を見てデザイナーを志した。本来ならマーシャル監督と本展示を監修する予定だったが、残念ながらマーシャルは昨年春に逝去。展覧会は彼女に捧げられている。
古今東西の映画史に鮮烈な印象を残した衣装が、かなり自由な感じで並んでいる。バルドー、ヘップバーン、ドヌーヴら時代のアイコンとなった女優たち。または、むせ返るような色気を放つ 『欲望という名の電車』(1951)のマーロン・ブランド。「ここで見せたかったのはモードにおける女性の進化。服装や態度からわかります。男性はかつて女性がそうだったように、徐々にオブジェ(欲望をともなって見られる対象)になっていきます」とゴルチエ。会場には今年のカンヌ映画祭で最高賞パルムドールを獲り、ゴルチエも熱狂的に支持する映画『チタン』(2021)のポスターが飾られる。連続殺人鬼となる謎の女性ダンサーが主役の本作は、ボーダーレス化が進み、女性も力を持つ時代の終着点のような作品なのだろう。
ペドロ・アルモドバル、リュック・ベッソン作品など、数々の衣装を担当してきたゴルチエ。会場には『フィフス・エレメント』(1997)のブルース・ウィリスの衣装も飾られる。こちらは今回を機にシネマテークに寄贈されることになった。(瑞)
INFORMATIONS
◎ Cinémode par Jean Paul Gaultier展 2022年1月16日迄
Cinémathèque Française : 51 rue de Bercy 13e M° Bercy
展覧会12€/9.5€/18歳未満6€。12h-19h (土日11h-20h)火休。
www.cinematheque.fr
◎ 映画 『Falbalas』劇場公開!
ゴルチエの人生に決定的な影響を与えたジャック・ベッケル監督 『Falbalas 偽れる装い』は,4Kで修復されDVDが発売されるほか、10月20日から劇場公開も。
Cinémathèque Française
Adresse : 51 rue de Bercy, 75013 Parisアクセス : M° Bercy